脂肪肝と糖尿病の最前線

脂肪肝はかつて良性の疾患であると考えられてきたが,肝硬変・肝癌にも進行し得る非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)が知られるようになり,状況は大きく変化した.NASHに対する薬物療法はいまだに確立されていないため,基礎・臨床の両面で治療法が検討されている.インスリン抵抗性および2型糖尿病はNASHの最も重要なリスク因子であり,糖脂質代謝の変化が病態に深く関与していることが明らかにされている.糖尿病治療薬を用いたNASHの治療に関しては,現時点ではインスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾンの効果が最も多いエビデンスが得られており,「NAFL...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 103; no. 12; pp. 3118 - 3125
Main Authors 渡辺, 純夫, 今, 一義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 2014
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.103.3118

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Summary:脂肪肝はかつて良性の疾患であると考えられてきたが,肝硬変・肝癌にも進行し得る非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis:NASH)が知られるようになり,状況は大きく変化した.NASHに対する薬物療法はいまだに確立されていないため,基礎・臨床の両面で治療法が検討されている.インスリン抵抗性および2型糖尿病はNASHの最も重要なリスク因子であり,糖脂質代謝の変化が病態に深く関与していることが明らかにされている.糖尿病治療薬を用いたNASHの治療に関しては,現時点ではインスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾンの効果が最も多いエビデンスが得られており,「NAFLD/NASH診療ガイドライン2014」でも糖尿病を合併したNASH治療にピオグリタゾンの投与が提案されている.しかし,ピオグリタゾンは長期投与による影響が大きな課題として残っており,治療法の決定打となり得ていない.現在は新規の糖尿病治療薬としてDPP-4阻害薬やGLP-1アナログ製剤などインスリン抵抗性をターゲットとした薬剤のほか,SGLT-2阻害薬など新しいタイプの糖尿病治療薬もNASHに対する有効性が期待されている.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.103.3118