作物の細胞組織培養に関する研究 : 第3報 新細胞壁溶解酵素ファンセラーゼによるイネの葉肉プロトプラストの単離

新細胞壁溶解酵素の1%ファンセラーゼと1%セルラーゼ"オノヅカ"R-10とを併用して, イネの葉肉プロトプラストを容易にしかも多量に単離できた。本研究に用いた植物材料は, 滅菌した種子をビタミン及び無機塩を含む寒天板上に播き, 23℃, 16.5 W/m2, 明暗14 h/10 hの条件下で25日間培養したイネの第2葉及び第3葉である。それらの葉身の長さは20~30 cmであった。従来の方法では, 展開したイネの葉肉からプロトプラストを単離することは極めて困難であった。本実験では, イネの展開葉の1g生重量あたり104~106個のプロトプラストが得られた。単離直後のプロトプ...

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Published in日本作物学会紀事 Vol. 58; no. 4; pp. 635 - 640
Main Authors 加藤, 久明, 遠山, 益, 今井, 豊彦
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本作物学会 1989
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ISSN0011-1848
1349-0990
DOI10.1626/jcs.58.635

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Summary:新細胞壁溶解酵素の1%ファンセラーゼと1%セルラーゼ"オノヅカ"R-10とを併用して, イネの葉肉プロトプラストを容易にしかも多量に単離できた。本研究に用いた植物材料は, 滅菌した種子をビタミン及び無機塩を含む寒天板上に播き, 23℃, 16.5 W/m2, 明暗14 h/10 hの条件下で25日間培養したイネの第2葉及び第3葉である。それらの葉身の長さは20~30 cmであった。従来の方法では, 展開したイネの葉肉からプロトプラストを単離することは極めて困難であった。本実験では, イネの展開葉の1g生重量あたり104~106個のプロトプラストが得られた。単離直後のプロトプラストの生存数は, 全単離プロトプラストの80~90%であった。セルラーゼ"オノヅカ"R-10の代りにRSを用いると, より短時間の処理によって, プロトプラストの収率と生存率とを増大させることができる。酵素処理時間は, その後のプロトプラストの培養にとって4h以内が適当であった。本法を用いる限り, マセロザイムあるいはペクチナーゼを用いる必要はない。本実験に於ても, 酵素液と培養液に1%ウシ血清アルブミン (BSA) を添加することは有効であった。イネの葉肉プロトプラストの単離は, ファンセラーゼ中に含まれるラミナリナーゼによるβ(1-3) グルカンの分解に負うところが大きいと考えられる。
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.58.635