1986年以降の4年間に経験された高齢者Listeriosisの5症例

高齢者を対象とする当院において1985年までは1例もListeriosisが経験されなかったが, 最近の4年間に5症例のListeriosisを経験した. 全例敗血症を呈し, 2例は髄液からも検出された. 5症例中3症例は死亡と予後不良であった. 5症例の基礎疾患は, 糖尿病, 肺癌, 慢性呼吸不全, 胃潰瘍, 再生不良性貧血であり3例にステロイドの使用を認め, また, 3例にH2-Blockerの使用を認めた. 剖検の3例においては全例に髄膜炎あるいは髄膜脳炎を認め, 2例に脾臓の肉芽腫様の変化を認めた. 5症例から検出された分離株の血清型は, 4株が4b型, 1株が1b型であり, 今日汎用...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 64; no. 11; pp. 1468 - 1473
Main Authors 坂元, 寛志, 安達, 桂子, 小平, 誠, 畠山, 勤, 稲松, 孝思, 中島, 敏晶, 増田, 義重
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 1990
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.64.1468

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Summary:高齢者を対象とする当院において1985年までは1例もListeriosisが経験されなかったが, 最近の4年間に5症例のListeriosisを経験した. 全例敗血症を呈し, 2例は髄液からも検出された. 5症例中3症例は死亡と予後不良であった. 5症例の基礎疾患は, 糖尿病, 肺癌, 慢性呼吸不全, 胃潰瘍, 再生不良性貧血であり3例にステロイドの使用を認め, また, 3例にH2-Blockerの使用を認めた. 剖検の3例においては全例に髄膜炎あるいは髄膜脳炎を認め, 2例に脾臓の肉芽腫様の変化を認めた. 5症例から検出された分離株の血清型は, 4株が4b型, 1株が1b型であり, 今日汎用される第2, 3世代セフェム剤やモノバクタム剤に対して全株耐性を示した. 近年の高齢者におけるListeriosisの増加傾向の原因として, Listeria monocytogenes に対して無効な第3世代セフェム剤が多用されていること, H2-Blockerの多用, さらに感染経路の面から考えて食生活の欧米化・輸入食品の増加などが関与しているものと思われる.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.64.1468