感染症発生動向調査に基づいた警報・注意報発生法における基準値変更の影響
目的 感染症発生動向調査に基づいた警報・注意報法における,警報・注意報の基準値変更にともなう影響について,5 類感染症の定点報告疾患を対象に検討した。 方法 感染症発生動向調査に実装された現行の方法と同様に,感染症流行の警報発生は,定点あたり報告数が警報の基準値を超えた場合とし,注意報は警報非発生時に注意報の基準値を超えた場合とした。現行の感染症流行の警報・注意報の基準値の他に,警報の開始基準値を上げた/下げた場合,終息基準値を上げた/下げた場合の 5 種類について,警報発生延べ週数,全延べ週数に占める割合,現行の発生週数を 1 としたときの比の 3 つを算出した。また注意報の対象疾患で注意報...
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Published in | 日本公衆衛生雑誌 Vol. 54; no. 3; pp. 168 - 177 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本公衆衛生学会
2007
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Subjects | |
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ISSN | 0546-1766 2187-8986 |
DOI | 10.11236/jph.54.3_168 |
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Summary: | 目的 感染症発生動向調査に基づいた警報・注意報法における,警報・注意報の基準値変更にともなう影響について,5 類感染症の定点報告疾患を対象に検討した。 方法 感染症発生動向調査に実装された現行の方法と同様に,感染症流行の警報発生は,定点あたり報告数が警報の基準値を超えた場合とし,注意報は警報非発生時に注意報の基準値を超えた場合とした。現行の感染症流行の警報・注意報の基準値の他に,警報の開始基準値を上げた/下げた場合,終息基準値を上げた/下げた場合の 5 種類について,警報発生延べ週数,全延べ週数に占める割合,現行の発生週数を 1 としたときの比の 3 つを算出した。また注意報の対象疾患で注意報延べ週数,割合および比を算出した。データは1999-2003年度 5 年間の感染症発生動向調査の保健所別定点あたり報告数とした。 成績 警報発生数の推移をみると,警報基準値を下げた場合,警報増加の開始週が早まるとともに警報収束の週が遅れる傾向が観察され,逆に基準値を上げた場合,警報開始週が遅れるとともに収束する週も早まる傾向があった。警報発生の延べ週数は警報基準値を上げると減少,下げると増加する傾向にあり,適度な範囲で基準値を変化させると,警報発生の延べ週数は多くの疾患で0.5倍から 2 倍程度の変動を示した。注意報でも同様の傾向を示し,基準値の変化によりインフルエンザ,水痘は0.4倍から 2 倍程度,麻疹,流行性耳下腺炎では0.3倍から 3 倍程度の変動であった。百日咳,風疹で警報の発生頻度が少ないのを除き,他疾患では全観察週の 5%前後の警報週が観察された。 結論 感染症発生動向調査に基づいた警報・注意報システムにおいて,警報・注意報の基準値変更にともなう警報・注意報の推移と頻度を検討し,基準値を下げることによる警報・注意報の増加,および上げることによるそれらの減少を観察された。百日咳,風疹で警報の発生頻度が少ないのを除き,各疾患の警報基準値に大きな問題がないことが確認された。 |
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ISSN: | 0546-1766 2187-8986 |
DOI: | 10.11236/jph.54.3_168 |