分子生物学的手法を用いたCryptosporidiumの種および遺伝子型鑑別法の比較と文献的考察

クリプトスポリジウム症の患者からは, 形態的に区別することができない様々な種または遺伝子型が検出されている. 種と遺伝子型を正確に鑑別することは感染源の特定や予防対策上重要である. 本研究では, クリプトスポリジウムの種および遺伝子型を鑑別する諸方法の有効性を, 患者由来株とC.parvum HNJ-1株を用いて比較するとともに, 文献的に検討した. Cryptosporidiumの18SrRNA, COWP, HSP70, Poly-TおよびTRAP-C1遺伝子は, 各PCR法により全株で増幅され, そのRFLPパターンは患者由来株間で一致し, C. parvumヒト型のパターンを示した....

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Published in感染症学雑誌 Vol. 76; no. 10; pp. 869 - 881
Main Authors 阿部, 仁一郎, 木俣, 勲, 井関, 基弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 2002
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Summary:クリプトスポリジウム症の患者からは, 形態的に区別することができない様々な種または遺伝子型が検出されている. 種と遺伝子型を正確に鑑別することは感染源の特定や予防対策上重要である. 本研究では, クリプトスポリジウムの種および遺伝子型を鑑別する諸方法の有効性を, 患者由来株とC.parvum HNJ-1株を用いて比較するとともに, 文献的に検討した. Cryptosporidiumの18SrRNA, COWP, HSP70, Poly-TおよびTRAP-C1遺伝子は, 各PCR法により全株で増幅され, そのRFLPパターンは患者由来株間で一致し, C. parvumヒト型のパターンを示した. また, HNJ-1株のパターンは患者由来株とは明らかに異なり, C.parvumウシ型のパターンと一致した. 一方, 18SrRNA遺伝子のダイレクトシーケンスでは, 患者由来株とHNJ-1株はC. parvumのヒト型とウシ型のシーケンスに各々一致した. 文献的に, PCR-RFLP法によるヒト型やウシ型のパターンは他種あるいは他の遺伝子型と同一であり, 鑑別には限界があるものと考えられた. 一方, 18SrRNAまたはCOWP遺伝子のシーケンスは, 種および遺伝子型ごとに異なることが知られており, これらの遺伝子をダイレクトシーケンスすることで, クリプトスポリジウムを正確に鑑別できるものと考えられた.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.76.869