フィリピンの家庭の疾病治療にかかる財政費用に関する研究 居住地域と所得層による比較

本研究は,フィリピンの都市部および農村部において家庭が負担する疾病あたりの財政費用を調べ,地域間および所得層間で比較検討することを目的としている。フィリピン,ダバオ市の都市部240世帯,農村部239世帯を対象に質問票による家庭訪問調査を行った結果,外来受診においては,民間医療機関での疾病あたり財政費用が,公立医療機関に比べ有意に高かった(P<0.0001)。また,都市部および農村部の両地域において,公立医療機関を選択する割合は非貧困層に比べ,貧困層が有意に高い傾向が認められ,貧困層は疾病あたりの財政費用がより安価な医療機関を選択する傾向にあることが明らかになった。さらに,項目別の財政費用...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 52; no. 7; pp. 639 - 651
Main Authors 本田, 文子, 梅内, 拓生, 三浦, 宏子, 濱田, 彰, 坂野, 晶司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2005
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Summary:本研究は,フィリピンの都市部および農村部において家庭が負担する疾病あたりの財政費用を調べ,地域間および所得層間で比較検討することを目的としている。フィリピン,ダバオ市の都市部240世帯,農村部239世帯を対象に質問票による家庭訪問調査を行った結果,外来受診においては,民間医療機関での疾病あたり財政費用が,公立医療機関に比べ有意に高かった(P<0.0001)。また,都市部および農村部の両地域において,公立医療機関を選択する割合は非貧困層に比べ,貧困層が有意に高い傾向が認められ,貧困層は疾病あたりの財政費用がより安価な医療機関を選択する傾向にあることが明らかになった。さらに,項目別の財政費用を地域間で比較すると,外来受診や家庭医療の薬剤購入にかかる交通費は,都市部より農村部で有意に高く(外来 P=0.005,家庭医療 P=0.009),地域間で医療サービスの利用可能性(アクセシビリティー)に格差があることが示された。また,疾病の財政費用を家計から支払うことが不可能ないしは困難な場合,家庭はローンまたはクレジット,病院のソーシャル・サービスなど支払を補助する手段を利用し,対処していることがわかった。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.52.7_639