肝臓の再生医療の現状

抗ウイルス剤や分子標的薬の進歩により,肝疾患患者の予後は改善されてきた.しかし,急性肝不全や非代償性肝硬変症の予後は依然として不良であり,肝移植に代わり得るような治療効果の高い内科的治療の開発が必要である.そのため,肝臓再生療法は肝細胞移植(hepatocyte transplantation)に始まり,体性幹細胞を用いた細胞療法へと進歩してきた.それは「肝細胞の補充による残存肝機能の補助」から「肝前駆細胞の活性化と免疫調節による肝再生」への転換を意味し,この転換により,肝不全治療において細胞療法は一定の治療効果をあげている.さらに,バイオ人工肝臓(bioartificial liver sy...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 108; no. 4; pp. 798 - 804
Main Authors 高見, 太郎, 松本, 俊彦, 坂井田, 功
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 10.04.2019
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.108.798

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Summary:抗ウイルス剤や分子標的薬の進歩により,肝疾患患者の予後は改善されてきた.しかし,急性肝不全や非代償性肝硬変症の予後は依然として不良であり,肝移植に代わり得るような治療効果の高い内科的治療の開発が必要である.そのため,肝臓再生療法は肝細胞移植(hepatocyte transplantation)に始まり,体性幹細胞を用いた細胞療法へと進歩してきた.それは「肝細胞の補充による残存肝機能の補助」から「肝前駆細胞の活性化と免疫調節による肝再生」への転換を意味し,この転換により,肝不全治療において細胞療法は一定の治療効果をあげている.さらに,バイオ人工肝臓(bioartificial liver system)や脱細胞化臓器骨格を用いた肝臓再生(bioengineered liver)等の人工臓器の開発も進められており,その実用化にはiPS(induced pluripotent stem)細胞やES(embryonic stem)細胞,線維芽細胞等に由来する肝臓構成細胞の作製技術が重要な役割を担う.今後は,体性幹細胞を用いた細胞療法の標準化と人工臓器の実用化に向けた研究の推進が望まれる.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.108.798