マングローブ種の実生定着に対するAcanthus ilicifoliusの影響

タイ国南部、およびマレーシア国のマングローブ林において,Acanthus ilicifoliusがマングローブ種の実生定着に及ぼす影響について吟味した。A. ilicifoliusの生育していない森林では,マングローブ種の実生や稚樹は閉鎖林冠下より林冠ギャップ下の方が有意に多く,良好な光環境がマングローブ種の定着には必要であることが示唆された。一方,A. ilicifoliusの生育している森林では,マングローブ種の実生や稚樹は,閉鎖林冠下でも林冠ギャッフ下でもいずれも少なかった。これは,A. ilicifoliusの植被率と林冠の植被率には負の相関があり,両者が相互補完的に林床に暗い環境を形...

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Published inTropics Vol. 8; no. 3; pp. 225 - 231
Main Authors 安島, 美穂, 津田, 智
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本熱帯生態学会 1999
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Summary:タイ国南部、およびマレーシア国のマングローブ林において,Acanthus ilicifoliusがマングローブ種の実生定着に及ぼす影響について吟味した。A. ilicifoliusの生育していない森林では,マングローブ種の実生や稚樹は閉鎖林冠下より林冠ギャップ下の方が有意に多く,良好な光環境がマングローブ種の定着には必要であることが示唆された。一方,A. ilicifoliusの生育している森林では,マングローブ種の実生や稚樹は,閉鎖林冠下でも林冠ギャッフ下でもいずれも少なかった。これは,A. ilicifoliusの植被率と林冠の植被率には負の相関があり,両者が相互補完的に林床に暗い環境を形成したためと考えられる。さらに,密生したA. ilicifoliusの茎はヒルギ科の幼根を伸ばすタイプの散布体の侵入を阻害している可能性も考えられる。密生したA. ilicifoliusは,マングローブ種の散布体の散布や実生の定着に阻害的に働いていることが示唆された。
ISSN:0917-415X
1882-5729
DOI:10.3759/tropics.8.225