個票データを用いた日本の電力需要の価格弾力性推計—所得階層別・地域別・季節別の比較

本研究では,2014年10月から2015年9月に環境省が実施した「家庭からの二酸化炭素排出量の推計に係る実態調査試験調査」のデータを用いて,「前月の電力料金」の情報から電力消費の価格弾力性の推計を行う。特に,所得や所在地情報を利用して所得階層別,地域別の推計を行う。また,季節による弾力性の違いも検証する。分析の結果,電力需要の価格弾力性は全国平均で0.152であった。これは,都道府県レベルの年次集計データを用いた先行研究と比べると,三分の一程度の水準である。所得階層別では,1,500万円を超える高所得世帯の弾力性が0.193と最も大きかった。また,250万円未満の世帯から1,500万円未満まで...

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Published in環境科学会誌 Vol. 34; no. 4; pp. 172 - 183
Main Authors 松本, 茂, 尾沼, 広基
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 環境科学会 31.07.2021
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ISSN0915-0048
1884-5029
DOI10.11353/sesj.34.172

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Summary:本研究では,2014年10月から2015年9月に環境省が実施した「家庭からの二酸化炭素排出量の推計に係る実態調査試験調査」のデータを用いて,「前月の電力料金」の情報から電力消費の価格弾力性の推計を行う。特に,所得や所在地情報を利用して所得階層別,地域別の推計を行う。また,季節による弾力性の違いも検証する。分析の結果,電力需要の価格弾力性は全国平均で0.152であった。これは,都道府県レベルの年次集計データを用いた先行研究と比べると,三分の一程度の水準である。所得階層別では,1,500万円を超える高所得世帯の弾力性が0.193と最も大きかった。また,250万円未満の世帯から1,500万円未満までの世帯では,弾力性の値が逆U字のような傾向が見られた。その中では,500–749万円の世帯が最も大きく0.163であった。地域別の推計では,電力会社の管轄地域別に10の地域について推計を行った。全体の傾向としては,東日本及び日本海側では弾力性が相対的に小さく,西日本及び太平洋側の地域では弾力性が高かった。また,季節による弾力性の違いも確認された。各地域において電力需要が高まる季節は弾力性が小さくなる傾向にあり,電力需要が低い時期は弾力性が大きくなる傾向にあることが示された。
ISSN:0915-0048
1884-5029
DOI:10.11353/sesj.34.172