病理学:Brachyspira感染による野生エゾシカの腸管スピロヘータ症
エゾシカ(Cervus nippon yesoensis)における腸管スピロヘータ感染の有無を調べるために,7頭の野生エゾシカについて組織学的,免疫組織化学的および電子顕微鏡学的検索を実施した.組織学的に,7頭中6頭の盲腸と結腸に腸上皮細胞と杯細胞の過形成ならびにマクロファージとリンパ球の浸潤を伴う粘膜固有層の水腫を認めた.多数の好銀性スピロヘータが陰窩に認められ,腸上皮細胞および杯細胞への侵入像もみられた.免疫組織化学的に,抗Brachyspira(Serpulina)hyodysenteriaeとB.pilosicoli血清を用いたSAB染色で,このスピロヘータは陽性を示した.電子顕微鏡学...
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Published in | Journal of Veterinary Medical Science Vol. 62; no. 9; pp. 947 - 951 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | English |
Published |
公益社団法人 日本獣医学会
2000
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Summary: | エゾシカ(Cervus nippon yesoensis)における腸管スピロヘータ感染の有無を調べるために,7頭の野生エゾシカについて組織学的,免疫組織化学的および電子顕微鏡学的検索を実施した.組織学的に,7頭中6頭の盲腸と結腸に腸上皮細胞と杯細胞の過形成ならびにマクロファージとリンパ球の浸潤を伴う粘膜固有層の水腫を認めた.多数の好銀性スピロヘータが陰窩に認められ,腸上皮細胞および杯細胞への侵入像もみられた.免疫組織化学的に,抗Brachyspira(Serpulina)hyodysenteriaeとB.pilosicoli血清を用いたSAB染色で,このスピロヘータは陽性を示した.電子顕微鏡学的に,このスピロヘータは長さ6−14μm,幅0.2−0.3μm,4−6個のうねりおよび13本の軸糸をもち,Brachyspira spp.に類似していた.これらの結果から,このスピロヘータは野生エゾジカに大腸炎をひき起こすこと,ならびにこの腸管スピロヘータ症がすでに日本の野生エゾシカの間で拡がっていることが示唆された.また,このスピロヘータによる大腸炎がエゾジカの新しい疾病となり,同一ないし類似のスピロヘータがエゾジカと牛を含む反芻獣に感染する可能性が示唆された. |
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ISSN: | 0916-7250 1347-7439 |
DOI: | 10.1292/jvms.62.947 |