遺伝性乳癌・卵巣癌に対する当院の診療体制

乳癌症例のうちの5%~10%が遺伝的体質が原因で,乳癌を発症しているとされている。その中で最も多いものがBRCA1および2の生殖細胞系列(germ-line)での病的変異による遺伝性乳癌・卵巣癌(HBOC)である。アジア諸国を含む諸外国では既にBRCA1あるいは2の病的変異を有する人々に対する診療が日常的に行われているが,日本ではほとんどまだ行われていない。乳癌リスクの最も高いこの人々の診療を日常的に行っていくことは,乳癌検診を推進していく上で避けて通れないものである。すなわち,リスクの高い人々にはそれに則した別の検診を行っていく必要がある。世界的にはこのような人々には半年に1回の乳房視・触診...

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Published in日本乳癌検診学会誌 Vol. 22; no. 2; pp. 187 - 192
Main Authors 大住, 省三, 清藤, 佐知子, 高橋, 三奈, 高畠, 大典, 青儀, 健二郎, 久保, 義郎, 堀, 伸一郎, 松元, 隆, 白山, 裕子, 田所, かおり, 井上, 実穂, 菊内, 由貴, 金子, 景香, 谷水, 正人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会 2013
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Summary:乳癌症例のうちの5%~10%が遺伝的体質が原因で,乳癌を発症しているとされている。その中で最も多いものがBRCA1および2の生殖細胞系列(germ-line)での病的変異による遺伝性乳癌・卵巣癌(HBOC)である。アジア諸国を含む諸外国では既にBRCA1あるいは2の病的変異を有する人々に対する診療が日常的に行われているが,日本ではほとんどまだ行われていない。乳癌リスクの最も高いこの人々の診療を日常的に行っていくことは,乳癌検診を推進していく上で避けて通れないものである。すなわち,リスクの高い人々にはそれに則した別の検診を行っていく必要がある。世界的にはこのような人々には半年に1回の乳房視・触診,1年1回のマンモグラフィと乳腺MRIを若い年齢から行っていくのが一般的である。ただ,通常のリスク因子と異なり,その体質が遺伝により血縁者間で共有することが多いが,外見上その遺伝的体質を引き継いでいるかどうかわからないなど,この疾患独特の診療上の注意点も存在する。この論文では,HBOCの乳癌に関する診療のポイントを整理して述べ,当院での診療体制を紹介し,通常の検診とは違うサーベイランスの意義,その中での乳腺MRIの重要性,さらにこの診療に不可欠と思われる遺伝カウンセラーの意義についても触れる。
ISSN:0918-0729
1882-6873
DOI:10.3804/jjabcs.22.187