富山県呉西地方における尊敬形「~テヤ」 : 意味・構造の地域差と成立・変化過程
富山県呉西地方には動詞尊敬形「〜テヤ」があり,南部の井波では継続相,北部の高岡では非継続相を表す。いわゆる「テ敬語」にあたる形とされてきたものだが,両方言とも基本終止形〜テヤが連体形・疑問形にもなり,このヤをコピュラとはみなせない。井波方言では,否定形が「〜テ(ン)+補助形容詞ナイ」であること,アクセントが「〜テ+補助用言」に準じることから,「〜テ+助動詞ヤ(コピュラとは別語)」と分析でき,高岡方言では,否定形が〜ンデヤとなること,アクセントが中止テ形やタ形に準じることから,テヤを一つの接尾辞だとみなせる。井波より南の五箇山には「〜テ+存在動詞アル」に由来する継続相尊敬形「〜テヤル」があり,井...
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Published in | 日本語の研究 Vol. 9; no. 3; pp. 33 - 47 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本語学会
01.07.2013
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Subjects | |
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ISSN | 1349-5119 2189-5732 |
DOI | 10.20666/nihongonokenkyu.9.3_33 |
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Summary: | 富山県呉西地方には動詞尊敬形「〜テヤ」があり,南部の井波では継続相,北部の高岡では非継続相を表す。いわゆる「テ敬語」にあたる形とされてきたものだが,両方言とも基本終止形〜テヤが連体形・疑問形にもなり,このヤをコピュラとはみなせない。井波方言では,否定形が「〜テ(ン)+補助形容詞ナイ」であること,アクセントが「〜テ+補助用言」に準じることから,「〜テ+助動詞ヤ(コピュラとは別語)」と分析でき,高岡方言では,否定形が〜ンデヤとなること,アクセントが中止テ形やタ形に準じることから,テヤを一つの接尾辞だとみなせる。井波より南の五箇山には「〜テ+存在動詞アル」に由来する継続相尊敬形「〜テヤル」があり,井波のテヤはその変化形,高岡のテヤはさらにそれが変化したものと推測される。こうした呉西地方のテヤ形の成立・変化は,上方語や他の西日本方言の「テ敬語」の成立についても再考の余地があることを示唆する。 |
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ISSN: | 1349-5119 2189-5732 |
DOI: | 10.20666/nihongonokenkyu.9.3_33 |