炭素材料併用型フォトフェントン反応による汚染物質除去機構の反応速度論的解析

バングラデシュなどの開発途上国では,アパレル産業などから排出される染色排水による環境汚染が深刻化している。染料は難生分解性であることから,生物学的処理法では処理が困難であるため,新しい排水処理法の開発が望まれている。フォトフェントン反応は促進酸化法の一種であり,鉄イオン,過酸化水素,光エネルギーの組み合わせにより,強力な酸化力をもつOHラジカルを連続的に生成し,それにより様々な難生分解性有機汚染物質を分解除去することが可能な排水処理法である。しかし,フォトフェントン反応は,処理後の鉄スラッジの生成などに起因するコストなどにより,ランニングコストが高いという課題が挙げられる。その解決策として,種...

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Published in環境科学会誌 Vol. 35; no. 2; pp. 103 - 112
Main Authors 村松, 孝亮, 徳村, 雅弘, 王, 斉, 石橋, 龍太郎, 安保, 貴永, 皆川, 正和, 三宅, 祐一, 雨谷, 敬史, 牧野, 正和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 環境科学会 31.03.2022
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Summary:バングラデシュなどの開発途上国では,アパレル産業などから排出される染色排水による環境汚染が深刻化している。染料は難生分解性であることから,生物学的処理法では処理が困難であるため,新しい排水処理法の開発が望まれている。フォトフェントン反応は促進酸化法の一種であり,鉄イオン,過酸化水素,光エネルギーの組み合わせにより,強力な酸化力をもつOHラジカルを連続的に生成し,それにより様々な難生分解性有機汚染物質を分解除去することが可能な排水処理法である。しかし,フォトフェントン反応は,処理後の鉄スラッジの生成などに起因するコストなどにより,ランニングコストが高いという課題が挙げられる。その解決策として,種々の炭素材料との併用によるフォトフェントン反応の促進・改善が試みられているが,それらのメカニズムについて詳細に研究した例は限られている。炭素材料併用による促進機序を明らかにすることで,より効率的なプロセスの設計・開発が期待される。本研究では,モデル染色排水の染料として,アゾ染料であるオレンジIIを用い,反応速度論的な解析に基づいて,炭素材料併用型フォトフェントン反応の促進機序の解明を行った。フォトフェントン反応単独の場合と比較し,炭素材料と併用することで,フォトフェントン反応によるオレンジIIの除去が促進されることを実験的に確認した。反応速度論的な考察により,フォトフェントン反応による分解および炭素材料への吸着の相加的な促進ではなく,相乗的に促進されていることが示唆された。炭素材料による三価の鉄イオンの還元実験の結果より,炭素材料による三価の鉄イオンの還元反応が,相乗的な促進に寄与していることが明らかとなった。
ISSN:0915-0048
1884-5029
DOI:10.11353/sesj.35.103