ピルビン酸添加による骨髄単核球における血管内皮増殖因子の発現増強を目指した短期培養法の研究

血管内皮前駆細胞(EPC)を用いた血管再生療法は血管バイパス形成術や血管内膜切除術の適応とならない重症虚血肢に対する治療オプションとして近年脚光を浴びている.骨髄からのEPC動員や局所におけるEPCの血管内皮細胞への分化には血管内皮増殖因子(VEGF)が重要な役割を果たしていることから,今回我々はマウス骨髄単核球(BMMNC)を用いてVEGF遺伝子発現の増強およびVEGF分泌量の増加を図るための新規培養法の開発を目指し,以下の実験を行なった. VEGFは低酸素下で転写因子HIF-1が安定化することで誘導される.その背景にはプロリル水酸化酵素(HIF-PH)の活性がピルビン酸により阻害されること...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 58; no. 1; pp. 26 - 32
Main Authors 小倉, 浩美, 入部, 雄司, 青木, 貴子, 菅野, 仁, 藤井, 寿一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 2012
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ISSN1881-3011
1883-0625
DOI10.3925/jjtc.58.26

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Summary:血管内皮前駆細胞(EPC)を用いた血管再生療法は血管バイパス形成術や血管内膜切除術の適応とならない重症虚血肢に対する治療オプションとして近年脚光を浴びている.骨髄からのEPC動員や局所におけるEPCの血管内皮細胞への分化には血管内皮増殖因子(VEGF)が重要な役割を果たしていることから,今回我々はマウス骨髄単核球(BMMNC)を用いてVEGF遺伝子発現の増強およびVEGF分泌量の増加を図るための新規培養法の開発を目指し,以下の実験を行なった. VEGFは低酸素下で転写因子HIF-1が安定化することで誘導される.その背景にはプロリル水酸化酵素(HIF-PH)の活性がピルビン酸により阻害されることが明らかになっている.ピルビン酸がBMMNCにおけるVEGF発現を増強することが期待されたため,マウスBMMNCのピルビン酸添加培養を行なった.EPC表面マーカーであるCD31+/CD34+二重陽性細胞は5mMピルビン酸により最も高くなり,VEGF遺伝子発現量は2日間の培養により培養前の27.8倍にまで達した.さらに培養液中VEGF濃度は5mMピルビン酸,4日間培養にて有意な上昇を認めた. ピルビン酸は細胞のエネルギー代謝上必須の有機酸であり,無害で安価のため,今回開発したEPC体外増幅法は今後治療的血管新生への応用が期待出来る.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.58.26