医薬品の研究開発と情報共有・知識創造

本研究は,医薬品の研究開発を組織における情報価値の生産,すなわち知識創造活動であると考え,特に進歩が著しい情報技術を用いて情報共有・知識創造をする意義・効果を探求した。具体的には,情報共有が知識混交を経て知識創造に至るメカニズムを,個人の持つ構造化された知識であるスキーマがコミュニケーションを通じて活発化する過程であるとし,有効スキーマ理論として提示した。したがって,単なる情報共有ではなく,組織の構成員が持つ知識を組織内で流動化させ,組織内の知識創造を促進させるダイナミックな「知識混交」こそが,組織の知識創造活動にとって重要である。そして,近時急速に進歩している電子コミュニケーション技術は,伝...

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Published in医療と社会 Vol. 7; no. 2; pp. 53 - 72
Main Author 印南, 一路
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 医療科学研究所 1997
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ISSN0916-9202
1883-4477
DOI10.4091/iken1991.7.2_53

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Summary:本研究は,医薬品の研究開発を組織における情報価値の生産,すなわち知識創造活動であると考え,特に進歩が著しい情報技術を用いて情報共有・知識創造をする意義・効果を探求した。具体的には,情報共有が知識混交を経て知識創造に至るメカニズムを,個人の持つ構造化された知識であるスキーマがコミュニケーションを通じて活発化する過程であるとし,有効スキーマ理論として提示した。したがって,単なる情報共有ではなく,組織の構成員が持つ知識を組織内で流動化させ,組織内の知識創造を促進させるダイナミックな「知識混交」こそが,組織の知識創造活動にとって重要である。そして,近時急速に進歩している電子コミュニケーション技術は,伝統的な人的ネットワークを時間的・空間的制約から解放し,この知識創造活動の場を飛躍的に拡大する。 組織の情報共有には,組織内,組織間の公式・非公式な情報共有に加え,組織の構成員が任意に参加するプラクティス・コミュニティ(職業的・知的好奇心を共有する非公式な人脈)との情報共有がある。医薬品の研究開発は知識集約的であり,分子生物学・遺伝子工学・医学にまたがる学際的交流が果たす役割が大きい。したがって,世界的規模のプラクティス・コミュニティに,研究開発担当者が自発的・積極的かつオープンに参加し,知識混交するメリットと必要性がある。いくつかの実例をかかげた。
ISSN:0916-9202
1883-4477
DOI:10.4091/iken1991.7.2_53