下甲介化学剤手術 トリクロール酢酸の応用

1. 80W/V%トリクロール酢酸による鼻閉の治療は,安全で副作用,中毒作用なく,耳鼻咽喉科医独自の治療手段で,86%の改善率を得た. 2. 通年性アレルギー性鼻炎のくしゃみ症状,水様性鼻汁症状の改善も可能と考えた. 3. 鼻閉改善の第一の理由は,本剤の影響した範囲での凝固壊死後の組織脱落による絶対的体積の減少にあると思われた. 4. 再生したと考えられた上皮は重層扁平化していて,その直下には好酸球の浸潤はなく,この部分でアレルギー性反応は生じていないと思われる所見が得られた. 5. 重層扁平化した上皮の部分の粘膜固有層の腺組織は機能低下を示している可能性が示唆された. 6. トリクロール酢酸...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 91; no. 7; pp. 1031 - 1041
Main Authors 八尾, 和雄, 設楽, 哲也, 高橋, 廣臣, 屋宜, 晃
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 1988
日本耳鼻咽喉科学会
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Summary:1. 80W/V%トリクロール酢酸による鼻閉の治療は,安全で副作用,中毒作用なく,耳鼻咽喉科医独自の治療手段で,86%の改善率を得た. 2. 通年性アレルギー性鼻炎のくしゃみ症状,水様性鼻汁症状の改善も可能と考えた. 3. 鼻閉改善の第一の理由は,本剤の影響した範囲での凝固壊死後の組織脱落による絶対的体積の減少にあると思われた. 4. 再生したと考えられた上皮は重層扁平化していて,その直下には好酸球の浸潤はなく,この部分でアレルギー性反応は生じていないと思われる所見が得られた. 5. 重層扁平化した上皮の部分の粘膜固有層の腺組織は機能低下を示している可能性が示唆された. 6. トリクロール酢酸による影響を受けた神経線維はその成分であるNeurofilament Proteinが蛋白変性することから,神経線維に対する免疫染色法では抗原性の低下,すなわち染色性低下といった所見を認めた.この点は特にアレルギー性鼻炎の神経を介する症状に影響したと思われた.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.91.1031