海産生物の生育に必要な水質 (全窒素・全リン濃度の下限値) の定量化：アサリおよび生物付着板を用いた現地調査

• Published in: 水環境学会誌 Vol. 43; no. 6; pp. 175 - 182
• Main Authors: 藤原, 建紀, 樋口, 和宏, 藤井, 智康
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 公益社団法人 日本水環境学会 2020
• Subjects: 下限値; 全窒素; 大阪湾; 播磨灘; 生物生産性
• ISSN: 0916-8958; 1881-3690
• DOI: 10.2965/jswe.43.175

内湾海域の生態系を維持するために最低限必要な, 全窒素TN・全リンTP濃度を現地実験によって調べた。実験では, TNの高い大阪湾北東部から低い播磨灘にかけて, 栄養塩濃度勾配に沿って7測点を設け, アサリおよび付着生物群集の栄養状態・成長速度と, TNとの関係を調べた。また, 実験海域の一次生産量分布を計算で求めた。調査海域の一次生産量は, TNに強く比例する海域と, 一次生産量の低い外海の特性を持った海域に明瞭に分かれ, その境界はTN＝0.2 mg L-1であった。アサリの軟体部湿重量はTNと強い正の相関があった。アサリの栄養状態は, TN < 0.3 mg L-1の海域では低く, 気象擾乱等で減耗が起きやすい状態であった。付着板上の生物量は, 海域のTNと高い相関があった。海域の年平均TNとTPの間には強い相関関係があり, TN＝0.2 mg L-1はTP＝0.029 mg L-1に相当した。