シンポジウム1-3 間葉系幹細胞を用いた炎症性関節炎の治療と再生
関節リウマチは進行性関節破壊を必発するが,破壊された関節機能は不可逆的で,修復を目指した治療の開発が必須である.我々は,多分化能を有するヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の炎症性関節炎への治療応用を目指してきた.まず,ヒトMSCはIL-1等の炎症性サイトカインの存在下でも骨芽細胞,骨細胞への分化が強力に誘導された.その過程には,Wnt5a/ROR2の誘導およびその下流のシグナル経路の関与が示された.脂肪組織由来間葉系幹細胞もIL-6刺激で骨芽細胞様の分化を呈した.また,IL-1で刺激したMSCはRANKLよりOPG産生が優位で,破骨細胞の分化抑制を介して関節破壊を制御した.一方,MSCから...
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Published in | 日本臨床免疫学会会誌 Vol. 37; no. 4; p. 258 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床免疫学会
2014
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ISSN | 0911-4300 1349-7413 |
DOI | 10.2177/jsci.37.258 |
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Summary: | 関節リウマチは進行性関節破壊を必発するが,破壊された関節機能は不可逆的で,修復を目指した治療の開発が必須である.我々は,多分化能を有するヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の炎症性関節炎への治療応用を目指してきた.まず,ヒトMSCはIL-1等の炎症性サイトカインの存在下でも骨芽細胞,骨細胞への分化が強力に誘導された.その過程には,Wnt5a/ROR2の誘導およびその下流のシグナル経路の関与が示された.脂肪組織由来間葉系幹細胞もIL-6刺激で骨芽細胞様の分化を呈した.また,IL-1で刺激したMSCはRANKLよりOPG産生が優位で,破骨細胞の分化抑制を介して関節破壊を制御した.一方,MSCから軟骨細胞への分化は,IL-6/Stat3リン酸化を介して誘導され,IL-17/Sox9リン酸化制御を介して抑制され,異なる刺激調節系の存在が示された.さらに,ナノファイバーシートに播種したヒトMSCをラット関節近傍に移植すると,関節炎,骨破壊が臨床的,構造的,病理学的に抑制された.ナノファイバー播種MSC治療群では関節局所のIL-1やIL-6発現や所属リンパ節腫大,脾腫,血清II型コラーゲン抗体産生が抑制され,リンパ節のT細胞の増殖,サイトカイン産生が阻害され,局所の治療効果と全身性免疫応答の抑制作用を有した.さらに,GFPで標識したMSCは移植部に留まり,局所で産生されるTGF-等の産生を介して免疫応答が抑制された.以上,ナノファイバーに播種したヒトMSCは,骨芽細胞や軟骨細胞への分化,破骨細胞の分化制御,全身性免疫応答の抑制作用を有し,炎症性関節炎の疾患制御,関節機能の再生・修復を目指す上で有効なツールである事が示された. |
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ISSN: | 0911-4300 1349-7413 |
DOI: | 10.2177/jsci.37.258 |