マツ材線虫病により罹病・枯死したマツ樹体内におけるマツノザイセンチュウの仮道管を通る移動

マツ材線虫病により発病あるいは枯死したマツ樹体内では、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus)は樹脂道および放射組織を主な生息場所としている。そして、樹体内での移動・分散には樹体内を網目状に広がる垂直樹脂道、水平樹脂道、さらには放射組織を利用していることが明らかにされている。本報では、アカマツ3年生苗木に対する接種実験において、発病、あるいは枯死した苗木の組織解剖観察の結果から、マツノザイセンチュウが仮道管を移動経路として利用している実態を確認し、解剖写真の裏づけのもと提示した。線虫接種後9日以降、苗木樹体内では線虫個体数の増加が進行した。この時期以後、線虫...

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Published in日本線虫学会誌 Vol. 38; no. 1; pp. 41 - 44
Main Author 真宮, 靖治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本線虫学会 2008
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Summary:マツ材線虫病により発病あるいは枯死したマツ樹体内では、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus)は樹脂道および放射組織を主な生息場所としている。そして、樹体内での移動・分散には樹体内を網目状に広がる垂直樹脂道、水平樹脂道、さらには放射組織を利用していることが明らかにされている。本報では、アカマツ3年生苗木に対する接種実験において、発病、あるいは枯死した苗木の組織解剖観察の結果から、マツノザイセンチュウが仮道管を移動経路として利用している実態を確認し、解剖写真の裏づけのもと提示した。線虫接種後9日以降、苗木樹体内では線虫個体数の増加が進行した。この時期以後、線虫は樹脂道だけでなく仮道管内にもその分布が広く認められるようになった。仮道管内の線虫は、放射柔細胞と仮道管が接する分野にある窓状壁孔を通って、放射組織から仮道管へ、さらに仮道管から放射組織へと移動していることが確認された。仮道管内での摂食や増殖活動は認められず、線虫は仮道管を移動経路としてのみ利用していることが示唆された。マツノマダラカミキリの蛹室周辺では、集中したマツノザイセンチュウ分散型3期幼虫が樹脂道のほか仮道管内にも多数分布していた。
ISSN:0919-6765
1882-3408
DOI:10.3725/jjn.38.41