酢酸リュープロレリンによる上腸間膜静脈血栓症の1例

症例は53歳,女性。子宮筋腫による不正性器出血に対し,酢酸リュープロレリン投与を開始した1週間後に腹痛を認め,腹部造影CT検査で門脈・上腸間膜静脈血栓症の診断となった。血栓溶解療法を施行したが,右大腿静脈から挿入した中心静脈カテーテル周囲にも血栓を生じたため,下大静脈フィルターを挿入した。その後,小腸狭窄を認めたため手術を施行した。病理組織学的検査で穿孔部の静脈に血栓およびヘモジデリン貪食細胞を認めた。このため小腸狭窄・穿孔の原因として静脈うっ血による出血性梗塞が考えられた。本症例では凝固能異常や膠原病,悪性疾患などの血栓性素因を認めず,酢酸リュープロレリンが血栓症の原因であったと考えられた。...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 32; no. 5; pp. 981 - 984
Main Authors 稲葉, 聡, 小原, 啓, 矢吹, 英彦, 庄中, 達也, 渡邉, 賢二, 北, 健吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2012
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.32.981

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Summary:症例は53歳,女性。子宮筋腫による不正性器出血に対し,酢酸リュープロレリン投与を開始した1週間後に腹痛を認め,腹部造影CT検査で門脈・上腸間膜静脈血栓症の診断となった。血栓溶解療法を施行したが,右大腿静脈から挿入した中心静脈カテーテル周囲にも血栓を生じたため,下大静脈フィルターを挿入した。その後,小腸狭窄を認めたため手術を施行した。病理組織学的検査で穿孔部の静脈に血栓およびヘモジデリン貪食細胞を認めた。このため小腸狭窄・穿孔の原因として静脈うっ血による出血性梗塞が考えられた。本症例では凝固能異常や膠原病,悪性疾患などの血栓性素因を認めず,酢酸リュープロレリンが血栓症の原因であったと考えられた。酢酸リュープロレリンによる血栓症の報告は少なく,非常にまれな病態と考えられたので報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.32.981