落針式レオメーターで測定した高温浴時の血液流動性の変化

我々は、日本式入浴時の血液流動性の変化について検討した。我々の血液専用落針式レオメーター(FNR)は、容器に充填されたヒト血液に、210秒以内に 8種類の重さの樹脂性ニードルを順次落下させ、その終末速度を測定する。この測定では、血液密度、ニードル密度及び終末速度を用いて、みかけの全血液粘度(aWBV)、血液の剪断応力および剪断速度を算出することができる。一回の FNR の血液流動性解析で、抗凝固処理していない少量の検体だけで複数の aWBV を同時に実測できる。  日本式入浴モデルとして、座位で入浴可能な浴槽に加温水道水を流し続け、健康成人被験者を腋下まで一定温度で浸した。心臓血行動態が変化す...

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Published in日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 75; no. 3; pp. 165 - 175
Main Authors 大村, 和伸, 山本, 秀樹, 徳留, 省悟, 黒須, 明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本温泉気候物理医学会 2012
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ISSN0029-0343
1884-3697
DOI10.11390/onki.75.165

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Summary:我々は、日本式入浴時の血液流動性の変化について検討した。我々の血液専用落針式レオメーター(FNR)は、容器に充填されたヒト血液に、210秒以内に 8種類の重さの樹脂性ニードルを順次落下させ、その終末速度を測定する。この測定では、血液密度、ニードル密度及び終末速度を用いて、みかけの全血液粘度(aWBV)、血液の剪断応力および剪断速度を算出することができる。一回の FNR の血液流動性解析で、抗凝固処理していない少量の検体だけで複数の aWBV を同時に実測できる。  日本式入浴モデルとして、座位で入浴可能な浴槽に加温水道水を流し続け、健康成人被験者を腋下まで一定温度で浸した。心臓血行動態が変化する条件を参考に予備的検討によって、42°Cかつ 10分間の入浴が血液流動性変化を観察するための必要条件だと判断した。  8例の男性被験者および 1例の女性被験者を対象に、42°Cで 10分間の一回入浴試験を行った。この一回入浴の血液流動性において、女性 1例を含む 6例で高い剪断速度での aWBV が上昇した。それ以外の1例は、入浴後 10分の時点で高い剪断速度での aWBVが上昇した。高い剪断速度で aWBV が上昇した症例では、同じ時期に低い剪断速度のaWBVが変化した。次に 6例の男性被験者を、10分と 5分の二回の入浴で構成された二回入浴試験に組入れた。全ての症例で早い剪断速度の aWBVが上昇し、一回目の入浴後の上昇が 2例、二回目の入浴後の上昇が3例、全入浴後の上昇が 1例であった。低い剪断速度での血液流動性は、高い剪断速度の aWBV 上昇と同時に変化した。また、これらの条件で、極短時間で血液流動性が変化していることがわかった。  血液流動性の変化は、42°C 以上の湯温および座位で腋下までの浸漬でみられた。従って我々は 42°C 以上の湯温の日本式入浴は危険だと考えた。
ISSN:0029-0343
1884-3697
DOI:10.11390/onki.75.165