鋼新生面における炭化水素油のトライボ化学分解に対する潤滑油添加剤の効果

蒸気圧が低い合成炭化水素油(MAC)を用い真空中で潤滑試験し,摩擦面で潤滑油が分解して,水素,低分子量の炭化水素が生成することを見出した。摩擦により生成する金属材料新生面の化学活性に着目し,潤滑油の分解に対する新生面の化学的役割について明らかにした。本研究では,軸受鋼AISI 52100を用いて,合成炭化水素油MACを基油として,そのトライボ化学分解に対する各種化合物(窒素,硫黄,リンを含む化合物およびリンを含むイオン液体)の抑制効果を検討し,効果的な化合物を見出した。窒素化合物は分解反応の誘導期間を延ばした。リン化合物は気体生成速度を抑制するとともに,臨界荷重を高くした。リンを含むイオン液体...

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Published inJournal of the Japan Petroleum Institute Vol. 53; no. 1; pp. 55 - 60
Main Authors 呂, 仁国, 七尾, 英孝, 小林, 公博, 久保, 朋生, 森, 誠之
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 石油学会 2010
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Summary:蒸気圧が低い合成炭化水素油(MAC)を用い真空中で潤滑試験し,摩擦面で潤滑油が分解して,水素,低分子量の炭化水素が生成することを見出した。摩擦により生成する金属材料新生面の化学活性に着目し,潤滑油の分解に対する新生面の化学的役割について明らかにした。本研究では,軸受鋼AISI 52100を用いて,合成炭化水素油MACを基油として,そのトライボ化学分解に対する各種化合物(窒素,硫黄,リンを含む化合物およびリンを含むイオン液体)の抑制効果を検討し,効果的な化合物を見出した。窒素化合物は分解反応の誘導期間を延ばした。リン化合物は気体生成速度を抑制するとともに,臨界荷重を高くした。リンを含むイオン液体は最も効果的な添加剤であり,気体生成速度の抑制と臨界荷重を著しく高くできることを見出した。摩擦面をマイクロXPSおよびTOF-SIMSで化学分析することにより,これらの添加剤の分解抑制効果は摩擦面に生成した金属塩によるものと推察した。
ISSN:1346-8804
1349-273X
DOI:10.1627/jpi.53.55