健常男性への炭酸温水手浴と足浴による生理的変化の差
部分浴により手、足、手足同時刺激を行うことで起こる自律神経系の変化を比較し、手浴と足浴の作用機序を考察した。健常成人男性 15名(24-53歳:31±10歳)を対象に、38°C 30分間の炭酸温水部分浴(モジュール攪拌型人工炭酸泉装置、溶存炭酸ガス濃度1100±100ppm、pH4.8)と淡水部分浴(pH7.4)を体験させ、その前5分間、最中、後10分間における生理的変化を測定した。部分浴としては、手浴、足浴、手足同時浴、さらに対照安静座位の7種類の実験を、それぞれを 1週間以上あけて無作為の順序で体験させた。生理的検査として、舌下温、鼓膜温、心拍変動、血圧、近赤外分光光度計による前額部血流、...
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Published in | 日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 72; no. 2; pp. 148 - 166 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
2009
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0029-0343 1884-3697 |
DOI | 10.11390/onki.72.148 |
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Summary: | 部分浴により手、足、手足同時刺激を行うことで起こる自律神経系の変化を比較し、手浴と足浴の作用機序を考察した。健常成人男性 15名(24-53歳:31±10歳)を対象に、38°C 30分間の炭酸温水部分浴(モジュール攪拌型人工炭酸泉装置、溶存炭酸ガス濃度1100±100ppm、pH4.8)と淡水部分浴(pH7.4)を体験させ、その前5分間、最中、後10分間における生理的変化を測定した。部分浴としては、手浴、足浴、手足同時浴、さらに対照安静座位の7種類の実験を、それぞれを 1週間以上あけて無作為の順序で体験させた。生理的検査として、舌下温、鼓膜温、心拍変動、血圧、近赤外分光光度計による前額部血流、さらにレーザードプラーによる浸水部(足部)と非浸水部(僧帽筋部)の皮膚血流速度を測定した。 その結果、手足同時浴では、炭酸温水でも淡水でも、足浴開始後 5-10分目には生理的変化を認めなかったが、後半の 30分目に舌下温と鼓膜温の有意な上昇、心拍数、脳血流、非浸水部の皮膚血流の増大を示した。 炭酸温水浴では、部分浴開始後 5-10分目において、手浴と足浴とで相反する心拍変動の変化を認め、手足同時浴ではその変化は消失した。一方、淡水浴では、そのような手と足との差は認められなかった。部分浴開始後 15分目以降の浸水部皮膚血流についても、炭酸温水手浴と足浴とで有意差を認めたが、淡水手浴と足浴の間では差がなかった。 以上、38°C、1100ppm 炭酸温水部分浴(手浴と足浴)において、開始直後の心拍変動や浴中の皮膚血流の変化に、手浴と足浴とで有意差が認められた。これは、浴液の pH や手浴と足浴の水圧の差などが、皮膚などの侵害受容イオンチャンネルの感度や反応性に影響し、体性自律神経反射や軸索反射の差を来すことで出現した可能性が示唆された。今後の詳細な研究の価値が支持された。 |
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ISSN: | 0029-0343 1884-3697 |
DOI: | 10.11390/onki.72.148 |