大分市S施設に発生したA型肝炎の流行について

大分市S施設において,1977年7月より,1978年2月までに,男子園児27名,男子寮内で働く女性1名,計28名の急性ウイルス性肝炎の発生を認めた.肝炎ウイルスの血清学的検査,および,初期糞便中のA型肝炎ウイルスの検索からA型肝炎の流行であることがわかった.感染経路としては発端者により汚染された風呂水が媒介になったことが最も考えられ,他に,水道栓や蛇口が媒介になった可能性も考えられた.男子寮内で発症を認められなかった28名について,昭和52年7月,および,昭和53年2月の採血の血清のHA抗体価を測定してみると,28名中明らかな不顕性感染と思われるものが7名(25%),初めからHA抗体陽性で,し...

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Published in肝臓 Vol. 21; no. 4; pp. 381 - 390
Main Authors 安倍, 弘彦, 佐田, 通夫, 瀬戸山, 浩, 桑木, 敏光, 中島, 文行, 川口, 元也, 谷川, 久一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 01.04.1980
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Summary:大分市S施設において,1977年7月より,1978年2月までに,男子園児27名,男子寮内で働く女性1名,計28名の急性ウイルス性肝炎の発生を認めた.肝炎ウイルスの血清学的検査,および,初期糞便中のA型肝炎ウイルスの検索からA型肝炎の流行であることがわかった.感染経路としては発端者により汚染された風呂水が媒介になったことが最も考えられ,他に,水道栓や蛇口が媒介になった可能性も考えられた.男子寮内で発症を認められなかった28名について,昭和52年7月,および,昭和53年2月の採血の血清のHA抗体価を測定してみると,28名中明らかな不顕性感染と思われるものが7名(25%),初めからHA抗体陽性で,しかもその後,抗体価が上昇していたことで,不顕性感染の可能性が高いもの14名(50%)を加えると,28名中21例(75%)と非常に高率で,私共で先に報告している基山肝炎の場合の不顕性感染率32名中1名(3.2%)と比べ,著しい差が認められ,感染型の差,あるいは,A型肝炎ウイルスのsubtypeの違いによるものなのか,興味ある問題と思われた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.21.381