茨城県県南地域病院における大腸癌の臨床医学的研究

過去15年間に土浦協同病院外科で手術-開腹または局所切除-された452症例を対象として検討を行なった。大腸癌手術症例は加令とともに男女差なく増加傾向を示し, 高令者の人口増加を考慮すれぽ絶対数の増加が推測される。手術死亡例は53才以上に限られ, 切除不能症例の死亡率が高く, 今後高令者の症例増加とともに早期診断および治療法への考慮が重要となる。 手術症例の生存率は次第に良くなっているようにみえる。治癒切除例についての生存率は初期以後には大きな差はない。累積生存率は男より女が高い。累積生存率は加令とともに低くなる傾向のなかで40才代が悪く, 60才代がもっとも安定した経過を示していた。40才代に...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 39; no. 5; pp. 1031 - 1039
Main Authors 柴田, 光一, 平沼, 進, 真田, 勝弘, 岡本, 浩平, 登内, 真
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 01.01.1991
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Summary:過去15年間に土浦協同病院外科で手術-開腹または局所切除-された452症例を対象として検討を行なった。大腸癌手術症例は加令とともに男女差なく増加傾向を示し, 高令者の人口増加を考慮すれぽ絶対数の増加が推測される。手術死亡例は53才以上に限られ, 切除不能症例の死亡率が高く, 今後高令者の症例増加とともに早期診断および治療法への考慮が重要となる。 手術症例の生存率は次第に良くなっているようにみえる。治癒切除例についての生存率は初期以後には大きな差はない。累積生存率は男より女が高い。累積生存率は加令とともに低くなる傾向のなかで40才代が悪く, 60才代がもっとも安定した経過を示していた。40才代には組織学的stage, Dukes分類でこれを裏付ける進行例が多く, またリンパ節転移例の割合が高かった。60才代はリンパ節転移著明例が少なかった。 術後予後評価には組織学的stageがもっとも良い。次にDukes分類であるが長期予後判定には修正使用が必要である。さらに早期症例の的確な予後判定に脈管侵襲を考慮する必要がある。 術後の予後を左右する因子はリンパ節転移, 漿膜浸潤および遠隔転移である。とくに長期予後はリンパ節転移により左右される。リンパ節転移陽性例の治癒のめどは10年と考えたい。今後大腸癌の良好な生存率を得るために, 啓蒙による早期発見, 適切なリンパ節郭清, 残存癌細胞に対する新しい強力な免疫, 化学療法などが必要である。
ISSN:0468-2513
1349-7421
DOI:10.2185/jjrm.39.1031