食道静脈瘤を合併した肝細胞癌の治療について

過去12年間に経験した食道静脈瘤合併肝癌の治療経験を検討した.この著しく治療困難な疾病の治療方針に関しては,まだ多くの解決すべき問題点があるが,現時点での我々の見解は以下の通りである. (1) 食道静脈瘤合併肝癌でも,肝癌を早期に診断できれば小範囲肝切除で満足すべき成績をおさめうる.この際,吐血の既往を有する静脈瘤あるいはGradeの高い静脈瘤に対しては同時に静脈瘤手術を併施しうる. (2) 40%以上の硬変肝切除を行なうと,約40%の門脈圧上昇を来すので,特にGradeの高い食道静脈瘤では症例に応じて静脈瘤手術を考慮すべきである.術式としては,手術時間,肝癌再発によるシャントの閉塞の可能性な...

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Published in肝臓 Vol. 21; no. 4; pp. 455 - 460
Main Authors 井口, 潔, 永末, 直文, 金島, 良一, 兼松, 隆之, 小林, 迪夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 01.04.1980
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Summary:過去12年間に経験した食道静脈瘤合併肝癌の治療経験を検討した.この著しく治療困難な疾病の治療方針に関しては,まだ多くの解決すべき問題点があるが,現時点での我々の見解は以下の通りである. (1) 食道静脈瘤合併肝癌でも,肝癌を早期に診断できれば小範囲肝切除で満足すべき成績をおさめうる.この際,吐血の既往を有する静脈瘤あるいはGradeの高い静脈瘤に対しては同時に静脈瘤手術を併施しうる. (2) 40%以上の硬変肝切除を行なうと,約40%の門脈圧上昇を来すので,特にGradeの高い食道静脈瘤では症例に応じて静脈瘤手術を考慮すべきである.術式としては,手術時間,肝癌再発によるシャントの閉塞の可能性などを考えた場合,遠位脾腎静脈吻合術が好ましいと考える. (3) 肝癌が切除されない症例での静脈瘤手術は必ずしも吐血を防止しえず,今後,検討されるべき課題である.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.21.455