腸管結節性リンパ過形成,気管支拡張症,反復性下痢を呈した低γ-グロブリン血症(IgA欠損)例-成因にかんする一考察

1966年にHermansらは,小腸結節性リンパ過形成を伴つたdysgammaglobulinemiaを一つの新しい症候群として報告した.本邦での報告例は極めて少ないが,その特徴的な臨床像を呈する点より関心を集めている.今回著者らの経験した症例は35才,男子で,気管支拡張症,反復性下痢を呈し,消化管のX線学的,内視鏡的ならびに生検所見より,腸管全域に及ぶ結節性リンパ過形成が認められた.また, IgA欠損を伴う低γ-グロブリン血症が証明され,彼等の報告例と極めて類似していた.著者らは本症の基本的病態は, Bリンパ球が欠損しているのではなく, Bリンパ球より形質細胞への分化の過程において必要なT細...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 66; no. 3; pp. 290 - 298
Main Authors 野村, 繁雄, 森田, 卓, 藤岡, 晨宏, 加納, 正, 小西, 英治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 01.03.1977
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.66.290

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Summary:1966年にHermansらは,小腸結節性リンパ過形成を伴つたdysgammaglobulinemiaを一つの新しい症候群として報告した.本邦での報告例は極めて少ないが,その特徴的な臨床像を呈する点より関心を集めている.今回著者らの経験した症例は35才,男子で,気管支拡張症,反復性下痢を呈し,消化管のX線学的,内視鏡的ならびに生検所見より,腸管全域に及ぶ結節性リンパ過形成が認められた.また, IgA欠損を伴う低γ-グロブリン血症が証明され,彼等の報告例と極めて類似していた.著者らは本症の基本的病態は, Bリンパ球が欠損しているのではなく, Bリンパ球より形質細胞への分化の過程において必要なT細胞の機能異常のために,形質細胞の発生異常をきたしたことによると考える.すなわち,胚中心様構造を伴う腸管結節性リンパ過形成,末梢血中のBリンパ球の増加は,形質細胞の発生異常によるfeed back機構を介してのBリンパ球の増生を反映したものと考える.下痢,吸収不全,消化管異常ならびに気管支拡張症はIgA欠損,低γ-グロブリン血症との関連で把えることができる.さらに,本症は免疫能の制御機溝ならびにIgA欠損における消化器系の癌の発生を考察するうえでの臨床モデルとして,把握できることを本症の意義として考察した.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.66.290