自己免疫性水疱症や扁平苔癬の口腔病変に対する局所療法 (抄録)

自己免疫性水疱症や扁平苔癬の口腔病変は難治性であり市販の口腔用ステロイド外用剤を使用しても効果が乏しい場合が多い。特に自己免疫性水疱症では急性期の口腔のびらん, 潰瘍は摂食困難などの原因となり, また全身治療開始後, 皮疹軽快後も粘膜疹が軽快しないためステロイド減量が困難などの問題を生じる。 我々は自己免疫性水疱症や扁平苔癬の口腔病変にステロイド局注, デルモベート®HPC-M軟膏単純塗布, 口腔フィルム貼付などを併用し良好な結果を得たので報告する。 目的: 自己免疫性水疱症と扁平苔癬の口腔粘膜病変に局所療法を併用し効果, 適応症例を検討。対象当科で加療中の粘膜病変を有する自己免疫性水疱症10...

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Published inSkin research Vol. 41; no. 2; p. 290
Main Authors 吉川, 邦彦, 田中, まり, 板見, 智, 東山, 真里
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本皮膚科学会大阪地方会 1999
Meeting of Osaka Dermatological Association
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ISSN0018-1390
1884-541X
DOI10.11340/skinresearch1959.41.290

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Summary:自己免疫性水疱症や扁平苔癬の口腔病変は難治性であり市販の口腔用ステロイド外用剤を使用しても効果が乏しい場合が多い。特に自己免疫性水疱症では急性期の口腔のびらん, 潰瘍は摂食困難などの原因となり, また全身治療開始後, 皮疹軽快後も粘膜疹が軽快しないためステロイド減量が困難などの問題を生じる。 我々は自己免疫性水疱症や扁平苔癬の口腔病変にステロイド局注, デルモベート®HPC-M軟膏単純塗布, 口腔フィルム貼付などを併用し良好な結果を得たので報告する。 目的: 自己免疫性水疱症と扁平苔癬の口腔粘膜病変に局所療法を併用し効果, 適応症例を検討。対象当科で加療中の粘膜病変を有する自己免疫性水疱症10例 (PVが9例, CP1例) と扁平苔癬1例につき検討した。特に自己免疫性水疱症は3群に分けて評価。1群は皮疹消退後も粘膜疹のためステロイドの減量困難例 (5例), 2群は鎮痛目的で全身療法開始初期よりの併用例 (4例), 3群は病変が粘膜に限局したステロイド非投与例 (1例)。方法: ケナコルト®局注 (約0.1mlを2週間に1回局注), デルモベート®HPC-M軟膏単純塗布, デルモベート®HPC-M軟膏+口腔フィルム貼付の3方法をびらん, 潰瘍部に単純または併用し4週間後の病変の縮小率で評価。調整法: デルモベートHPCM軟膏は固着性を増すためデルモベート®軟膏にヒドロキシセルロースを混合。外用量は4~8週間に10g使用。口腔フィルムは当院薬剤部に依頼しエタノールにヒドロキシセルロースを溶解しシート状に伸ばして乾燥させ5センチ角に切り作成した。口腔用フィルムは貼付後約3時間で溶解する。 結果: 自己免疫性水疱症では著効5例, 有効5例, 無効0。1群では局所療法併用により, 5例中4例でステロイド減量可能, 2群では鎮痛に有効, 3群ではステロイド全身投与でコントロール可能。口腔扁平苔癬1例で著効。副作用としては口腔カンジダ症と局注部に黄色腫様変化を認めた。考察: 局所治療は自己免疫性水疱症で粘膜疹のみ難治例や早期のステロイド減量に有用であり, 口腔扁平苔癬にも有効であり試みるべき治療と考える。ただしデルモベートHPCM軟膏については長期使用による局所的副作用を避けるため, びらん, 潰瘍治癒後は, より弱いステロイド剤に切り替えていくことも必要である。口腔用フィルムはそれ自体有効成分を含有しないので目的に応じてステロイド以外の外用剤例えば局所麻酔剤, 抗真菌剤などと併用することにより様々な用途に応用しうると考える。 なお以上の内容は日本皮膚科学会誌に投稿準備中であるため要旨のみ記載した。
ISSN:0018-1390
1884-541X
DOI:10.11340/skinresearch1959.41.290