三叉神経痛様の激痛を生じさせたと考えられた唾液流出障害の1例

症例の概要:患者は,45歳の男性で摂食開始時に生じる左側頬部の発作痛と食後の持続痛を主訴に来院した.激痛のために食事がとれない状態であった.発作痛は,食事開始時,特に食物を口の中に入れて噛み始めた直後に左側顎下部に突発性の激痛が生じるもので,1分以内に緩解するものであった.また,痛みをこらえて食事を継続すると,その後,食事中に発作痛は生じず,いったんはこの発作痛は緩解し,これらの性質は三叉神経痛と類似していた.持続痛は咀嚼筋の圧痛を伴っており,咀嚼筋の筋筋膜痛症候群と類似していた.カルバマゼピンの処方やトリガーポイント注射を試みたが,完全には奏功しなかった.各種画像検査や血液検査を行ったが,異...

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Published in日本口腔顔面痛学会雑誌 Vol. 10; no. 1; pp. 43 - 47
Main Authors 岡田, 明子, 野間, 昇, 山寺, 智美, 淺野, 早哉香, 関根, 尚彦, 今村, 佳樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本口腔顔面痛学会 2017
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Summary:症例の概要:患者は,45歳の男性で摂食開始時に生じる左側頬部の発作痛と食後の持続痛を主訴に来院した.激痛のために食事がとれない状態であった.発作痛は,食事開始時,特に食物を口の中に入れて噛み始めた直後に左側顎下部に突発性の激痛が生じるもので,1分以内に緩解するものであった.また,痛みをこらえて食事を継続すると,その後,食事中に発作痛は生じず,いったんはこの発作痛は緩解し,これらの性質は三叉神経痛と類似していた.持続痛は咀嚼筋の圧痛を伴っており,咀嚼筋の筋筋膜痛症候群と類似していた.カルバマゼピンの処方やトリガーポイント注射を試みたが,完全には奏功しなかった.各種画像検査や血液検査を行ったが,異常所見を認めなかった.梅干しなどをみせただけで痛みが再現され,左側耳下腺造影検査を試みたところ,ステノン氏管の狭窄が認められた.また,耳下腺造影検査の際の造影剤注入時に抵抗が強く,いつも自覚する痛みの部位に強い痛みが生じたため,ステノン氏管の狭窄ないし閉塞の関与が疑われた.耳下腺造影検査後に痛みは消失し,現在まで痛みの再燃が生じていない. 考察:摂食開始時疼痛は三叉神経痛と診断されることが多い.しかし,ステノン氏管の狭窄でも摂食開始時の疼痛を生じることがあり,唾液腺造影までを含めた唾液腺疾患の除外診断が必要であると考えられた. 結論:ステノン氏管狭窄により,三叉神経痛様の摂食開始時疼痛を引き起こした1例を経験した.
ISSN:1883-308X
1882-9333
DOI:10.11264/jjop.10.43