進化から学ぶインスリン様ペプチドシステムの生理的意義 動物の一生の健康を司る同化ホルモン

インスリン様ペプチドは,線虫からヒトに至るまで保存されている稀有な同化ホルモンである.本稿でご紹介するように,インスリン様ペプチド,結合タンパク質,受容体やそのシグナル伝達分子などから成るインスリン様ペプチドシステムは,旧口動物と新口動物で異なる戦略で進化してきたと考えられる.原生生物で動物に一番近いと言われている襟鞭毛虫のゲノムデータベースを見ても,残念ながらインスリン様ペプチドに関連した遺伝子は認められない.しかし,存在が確認された動物では,基本となる生理活性は維持されており,その活性のファインチューニングの仕組みが,動物の大きさや生存している環境や食性などに適応して修飾されてきたと言えそ...

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Published in化学と生物 Vol. 60; no. 5; pp. 240 - 250
Main Authors 永田, 晋治, 尾添, 淳文, 清家, 瞳, 亀井, 宏泰, 髙橋, 伸一郎, 富岡, 征大, 伯野, 史彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本農芸化学会 01.05.2022
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Summary:インスリン様ペプチドは,線虫からヒトに至るまで保存されている稀有な同化ホルモンである.本稿でご紹介するように,インスリン様ペプチド,結合タンパク質,受容体やそのシグナル伝達分子などから成るインスリン様ペプチドシステムは,旧口動物と新口動物で異なる戦略で進化してきたと考えられる.原生生物で動物に一番近いと言われている襟鞭毛虫のゲノムデータベースを見ても,残念ながらインスリン様ペプチドに関連した遺伝子は認められない.しかし,存在が確認された動物では,基本となる生理活性は維持されており,その活性のファインチューニングの仕組みが,動物の大きさや生存している環境や食性などに適応して修飾されてきたと言えそうである.最近,宿主のインスリン様ペプチドの遺伝子を取り込んで,感染によってインスリン様活性を発揮する可能性があるウイルスの出現も報告されている(1).
ISSN:0453-073X
1883-6852
DOI:10.1271/kagakutoseibutsu.60.240