失語症者の運転上の特徴

運転の認知プロセスには認知-予測-判断-操作があるが, これを包含した運転モデルが Michon (1985) と渡邉 (2016) によって提唱されている。モデルは大きく strategic level (運転計画) , tactical level (状況把握と予測判断, 操作決定) , operational level (実際の運転操作) に分かれている。それぞれに関与する高次脳機能として, 遂行機能, 視覚や聴覚の感覚モダリティによる状況の認知・注意集中と分配・遂行機能があると考えられる。こうした運転行動における認知的負荷は, 運転の環境によって変わる。自験例での失語症の運転再開可能...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 43; no. 2; pp. 137 - 141
Main Author 佐藤, 卓也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 30.06.2023
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.43.137

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Summary:運転の認知プロセスには認知-予測-判断-操作があるが, これを包含した運転モデルが Michon (1985) と渡邉 (2016) によって提唱されている。モデルは大きく strategic level (運転計画) , tactical level (状況把握と予測判断, 操作決定) , operational level (実際の運転操作) に分かれている。それぞれに関与する高次脳機能として, 遂行機能, 視覚や聴覚の感覚モダリティによる状況の認知・注意集中と分配・遂行機能があると考えられる。こうした運転行動における認知的負荷は, 運転の環境によって変わる。自験例での失語症の運転再開可能群と運転再開見送り群との神経心理学的検査の比較検討では, MMSE, BIT の文字抹消検査, WAIS-Ⅲの算数検査, BADS の動物園地図検査と修正 6 要素検査で有意差がみられた。 これらは言語機能が運転行動に影響を与える可能性があることを示唆する。また BDAE 別の比較検討では, MMSE, TMT part A と part B, および WAIS-Ⅲ の符号検査で有意差がみられた。これは失語の重症度によって影響が出る可能性が考えられたものの, 今後も検討が必要である。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.43.137