新型コロナウイルス感染症第1波の流行直後における大学体育授業の学修成果:遠隔授業による主観的恩恵と身体活動に焦点をあてた検証
本研究の目的は,新型コロナウイルス感染症流行第1波直後における体育授業の受講に伴う学修成果,とりわけ主観的恩恵や身体活動について,授業形態と授業形式を踏まえて明らかにすることであった.体育を専攻しない大学生5,719名を対象に,2020年7-8月にWebによる調査を行った.調査内容は,運動部活動所属の有無や性別などの基本的属性のほか,体育授業の受講状況や満足度,初年次体育授業の主観的恩恵評価尺度(Perceived Benefits Scale in university First-Year PE classes:以下,PBS-FYPE)(西田ほか,2017),IPAQ-SV(the Jap...
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Published in | 大学体育スポーツ学研究 Vol. 18; pp. 2 - 20 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 全国大学体育連合
2021
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 2434-7957 |
DOI | 10.20723/jpeshe.18.0_2 |
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Summary: | 本研究の目的は,新型コロナウイルス感染症流行第1波直後における体育授業の受講に伴う学修成果,とりわけ主観的恩恵や身体活動について,授業形態と授業形式を踏まえて明らかにすることであった.体育を専攻しない大学生5,719名を対象に,2020年7-8月にWebによる調査を行った.調査内容は,運動部活動所属の有無や性別などの基本的属性のほか,体育授業の受講状況や満足度,初年次体育授業の主観的恩恵評価尺度(Perceived Benefits Scale in university First-Year PE classes:以下,PBS-FYPE)(西田ほか,2017),IPAQ-SV(the Japanese version of the International Physical Activity Questionnaire-Short Version)日本語版(村瀬ほか,2002),体育授業での学びに関する自由記述であった.その結果,受講満足度は5段階評価の2.92点,主観的恩恵は尺度基準値の65%,とくに,「協同プレーの価値理解」は基準値の5割未満と,コロナ前の大学体育授業よりも顕著に低い値であった.運動部所属者以外の総身体活動量の平均値は,先行研究基準値より男子で37%,女子で28% 低く,中央値は健康づくりのための身体活動基準2013(厚生労働省,2013)の23 METs・時/週を大きく下回っていた.2元配置分散分析の結果,大部分の下位尺度にて,授業形態と授業形式の交互作用が有意であった.また,PBS-FYPEのいくつかの下位尺度ではオンデマンド型より同時双方向型の形態の方が,講義のみより実技と講義の両方の形式の方が,ともに高い主観的恩恵を示した.身体活動については,オンデマンド型での授業形式の差異は認められなかった一方で,同時双方向型では講義のみよりも実技と講義の両方を行う授業の方が,有意に高かった.コロナ禍の体育授業での学びに関する自由記述のテキストマイニング分析から,オンライン授業を通じて,室内にて可能となる正しい運動方法や健康的な生活習慣を考える機会についての学修がなされたことが明らかになった.結論として,コロナ禍のオンライン体育授業の学修成果は,学生の受講満足度,主観的恩恵,身体活動量のすべてにおいてプレコロナ期の結果と比べて著しく低いことが明らかになった.また,オンデマンド型よりも同時双方向型の授業形態が,講義のみよりも実技と講義の両方の授業形式が,高い学修成果をもたらすことが示唆された. |
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ISSN: | 2434-7957 |
DOI: | 10.20723/jpeshe.18.0_2 |