マルチリンガルと電気刺激による言語機能マッピング
電気刺激による脳機能マッピング (electrical stimulation mapping : ESM) は, 脳を直接電気で刺激して反応を観察し, 脳の機能局在を評価する手法である。難治性てんかんや脳腫瘍における ESM 研究では, 多言語話者の言語機能局在に関して多数報告があるが, 第一言語と第二言語以降の関係については多様なパターンがある。多言語話者では, 言語の獲得時期・習熟度・使用環境などに加えて, 言語の側性化, 病変の部位・罹患期間など多様な要因が言語機能局在にかかわると考えられる。最近のシステマティックレビューによれば, 上記の複数の条件の組み合わせにより, 一定の傾向が見...
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Published in | 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 42; no. 3; pp. 282 - 286 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
30.09.2022
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Subjects | |
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ISSN | 1348-4818 1880-6554 |
DOI | 10.2496/hbfr.42.282 |
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Summary: | 電気刺激による脳機能マッピング (electrical stimulation mapping : ESM) は, 脳を直接電気で刺激して反応を観察し, 脳の機能局在を評価する手法である。難治性てんかんや脳腫瘍における ESM 研究では, 多言語話者の言語機能局在に関して多数報告があるが, 第一言語と第二言語以降の関係については多様なパターンがある。多言語話者では, 言語の獲得時期・習熟度・使用環境などに加えて, 言語の側性化, 病変の部位・罹患期間など多様な要因が言語機能局在にかかわると考えられる。最近のシステマティックレビューによれば, 上記の複数の条件の組み合わせにより, 一定の傾向が見出されるものの, 脳病変の切除を行う際には, 各言語をそれぞれ評価することが不可欠である。我々はこれまで, 2 症例の多言語話者に対する覚醒下手術を経験しており, ともに各言語共通領域と特異領域を見出し, また言語の切り替え領域も確認できた。さらに, 興味深いことに, 1 例では, 再手術時に言語局在に大きな変化がみられ, 緩徐に進行する神経膠腫症例において, 言語処理に関して可塑性が働くことが示唆された。 |
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ISSN: | 1348-4818 1880-6554 |
DOI: | 10.2496/hbfr.42.282 |