兵庫県但馬地方のコナラ林とスギ人工林におけるニホンジカの生息密度勾配に伴う植物種数の変化パタン

ニホンジカCervus nippon Temminck(以下,シカ)による採食が,森林下層植生内の植物種数の変化パタンに与える影響を検討するため,兵庫県但馬地方で,シカの生息密度が異なるコナラ林31地点,スギ人工林(以下,スギ林)30地点で群落組成調査を実施した。その結果,スギ林は,コナラ林に比べてシカの採食の影響による種数の減少速度が大きい傾向が示された。この違いは,シカの採食による直接効果と被度を介した間接効果の働きが,両植生タイプ間で違うことに起因すると考えられた。直接効果の働きの違いには,コナラ林では,木本植物が多く,スギ林では,草本植物が多いといった種組成の違いが影響していた。一方,...

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Published in森林応用研究 Vol. 21; no. 2; pp. 1 - 8
Main Authors 梅田, 浩尚, 藤木, 大介, 岸本, 康誉, 室山, 泰之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 応用森林学会 2012
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Summary:ニホンジカCervus nippon Temminck(以下,シカ)による採食が,森林下層植生内の植物種数の変化パタンに与える影響を検討するため,兵庫県但馬地方で,シカの生息密度が異なるコナラ林31地点,スギ人工林(以下,スギ林)30地点で群落組成調査を実施した。その結果,スギ林は,コナラ林に比べてシカの採食の影響による種数の減少速度が大きい傾向が示された。この違いは,シカの採食による直接効果と被度を介した間接効果の働きが,両植生タイプ間で違うことに起因すると考えられた。直接効果の働きの違いには,コナラ林では,木本植物が多く,スギ林では,草本植物が多いといった種組成の違いが影響していた。一方,被度を介した間接効果の働きの違いには,コナラ林では,ササ類の被度の減少に伴う植物種間競争の緩和によって,シカ密度が増加しても種数が単純に減少しないことが影響していた。以上のことから,下層植生の種組成や低木層の優占種が異なる森林植生タイプ間では,シカの採食の影響による下層植生の植物種数の変化パタンは異なることが示唆された。
ISSN:1342-9493
2189-8294
DOI:10.20660/applfor.21.2_1