家蠶の卵巣片側剔出の次代に及ぼす影響

1. 家蠶幼蟲第5齡初期に卵巣片側剔出を行つた結果、其残留卵巣内に形成される卵細胞は著しく形状を増大し、且卵數を増加した。 2. 剔出は5齡の初期に行ふと末期に行ふとで、卵形、卵數に大差は見られない。 3. 斯樣な卵から孵化した幼蟲は顯著な體量の増加を示し、蛾に於ては産卵數を増加した。即ち次代全世代にわたつて、剔出の影響は持續される。 4. 此他尚次代に於ては經過日數の短縮、死亡率の低下も見られる。經過日數の短縮は増加體量の低減する際に起る。 5. 卵巣片側剔出により次代の雌雄率には變化は觀られない。 6. 卵巣片側剔出の次代が良好な結果を示す理由は、剔出を受けた母體に於て、卵細胞の發育増大に...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本蚕糸学雑誌 Vol. 1; no. 2; pp. 136 - 153
Main Author 橋本, 春雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本蚕糸学会 1930
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:1. 家蠶幼蟲第5齡初期に卵巣片側剔出を行つた結果、其残留卵巣内に形成される卵細胞は著しく形状を増大し、且卵數を増加した。 2. 剔出は5齡の初期に行ふと末期に行ふとで、卵形、卵數に大差は見られない。 3. 斯樣な卵から孵化した幼蟲は顯著な體量の増加を示し、蛾に於ては産卵數を増加した。即ち次代全世代にわたつて、剔出の影響は持續される。 4. 此他尚次代に於ては經過日數の短縮、死亡率の低下も見られる。經過日數の短縮は増加體量の低減する際に起る。 5. 卵巣片側剔出により次代の雌雄率には變化は觀られない。 6. 卵巣片側剔出の次代が良好な結果を示す理由は、剔出を受けた母體に於て、卵細胞の發育増大に使用される榮養物質が相對的に其量を増加し、其結果形状を増大した卵内に形成される胚子の體形を増大せしめたことに起因する。胚子體形の増大は之を構成する細胞の數が増加したことに基くものと考へられる。
ISSN:0037-2455
1884-796X
DOI:10.11416/kontyushigen1930.1.2_136