Initial-ContactとMid-stanceにおけるアライメント比較
【はじめに】 退行変性疾患である変形性関節症の歩行の特徴としてMid-Stance(以下MSt)における体幹の動揺が挙げられる。歩行という一連の流れの中でMStの相のみで体幹動揺が出現するとは考えにくく、MStに至る過程において異常が生じた結果、MStで体幹の動揺が起こると推察する。これに関して歩行時の上前腸骨棘を結ぶ線(以下骨盤傾斜角度)に関する報告はあるが、両側の肩峰を結んだ線(以下肩峰傾斜角度)と骨盤傾斜角度の関連を示した報告は少ない。そこで今回、健常者を対象に歩行周期の第一相であるInitial-Contact(以下IC)とMStに着目し双方の関連性について検討する。 【対象】 本...
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Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2008; p. 102 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州理学療法士・作業療法士合同学会
2008
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu |
Subjects | |
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ISSN | 0915-2032 2423-8899 |
DOI | 10.11496/kyushuptot.2008.0.102.0 |
Cover
Summary: | 【はじめに】 退行変性疾患である変形性関節症の歩行の特徴としてMid-Stance(以下MSt)における体幹の動揺が挙げられる。歩行という一連の流れの中でMStの相のみで体幹動揺が出現するとは考えにくく、MStに至る過程において異常が生じた結果、MStで体幹の動揺が起こると推察する。これに関して歩行時の上前腸骨棘を結ぶ線(以下骨盤傾斜角度)に関する報告はあるが、両側の肩峰を結んだ線(以下肩峰傾斜角度)と骨盤傾斜角度の関連を示した報告は少ない。そこで今回、健常者を対象に歩行周期の第一相であるInitial-Contact(以下IC)とMStに着目し双方の関連性について検討する。 【対象】 本研究に同意が得られた下肢関節に既往のない健常者11名(男性7名、女性4名、平均年齢23.8歳)。 【方法】 対象者の両肩峰・両上前腸骨棘にマーカーを装着し、デジタルカメラを用いて立位姿勢と自由歩行を前額面より撮影する。撮影した画像より、まず立位時の肩峰傾斜角度と骨盤傾斜角度を計測し基準線とする。次に歩行時右下肢のICとMStの静止画を選出し前額面上における肩峰傾斜角度、骨盤傾斜角度を計測した。なお傾斜角度の計測には画像処理ソフトScion Imageを用いた。右肩峰・右上前腸骨棘が挙上した場合を(-)、下制した場合を(+)で表記した。 【結果】 肩峰傾斜角度の平均はICで1.49°、MStで0.60°であった。骨盤傾斜角度の平均はICで0.15°、MStで-0.11°であった。ICとMStの差(MSt-IC)の平均は肩峰傾斜角度で-0.89°、骨盤傾斜角度で-0.25°であった。ICとMStではそれぞれ6パターンのアライメントがみられた。またICからMStへの移行のパターンは4つに分類された。 【考察】 今回は健常者を対象として肩峰傾斜角度と骨盤傾斜角度の調査を行った。ICからMStにかけての角度の変移は肩峰傾斜角度で平均1.49°から0.60°、骨盤傾斜角度で平均0.15°から-0.11°と差はほとんどみられなかった。ICとMStにおける肩峰傾斜角度と骨盤傾斜角度の差が小さい場合は体幹の動揺が小さいくなる。角度の変化が大きくなるとTrendelenburg歩行やDuchenne歩行といったような体幹もしくは骨盤の動揺が出現する。また、ICとMStにおける体幹アライメントは6つのパターン、ICからMStへの移行時の体幹アライメントは4つのパターンに分類することができた。健常者においては同一肢位をとっておらず様々なバリエーションで体幹を制御していることが推察でき、このことが肩峰傾斜角度と骨盤傾斜角度の変化を少なくしている。ICからMStに移行するにおいてパターンの違いはあるが、角度の変化を最小限に制御する体幹・骨盤帯の機能が歩行時の安定性に関与していることが示唆された。 今後は変形性股関節症患者等の歩行を分析し、今回の結果と比較検討を行なっていきたい。 |
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Bibliography: | 102 |
ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
DOI: | 10.11496/kyushuptot.2008.0.102.0 |