変形性膝関節症における膝関節位置覚及び転倒との関係について

【目的】 膝関節は下肢の中間関節であり、高齢者における膝関節機能障害は転倒リスクの一要因である。今回、変形性膝関節症患者での関節位置覚と転倒について検討し、若干の知見を得たので以下に報告する。 【方法】 対象は当院外来通院し保存的治療を行っている片側性変形性膝関節症患者で、過去に転倒歴3回以上(転倒未遂含む)、膝関節以外特に問題のない、独歩行可能な平均年齢73.3歳の女性16例とした。測定項目は年齢、転倒回数、罹患期間、膝関節自動可動域、片脚立位時間(開眼)、10m歩行時間、関節位置覚(15°、30°、45°、60°)を計測した。関節位置覚は、自然下垂位より伸展方向に3回ずつ行った平均値を用い...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2010; p. 164
Main Authors 轟原, 与織, 迫田, 真知, 有薗, 潤一, 西村, 謙一, 早瀬, 正寿, 中馬, 啓介, 村山, 充, 大迫, 信哉, 尾辻, 栄太, 牛ノ濱, 政喜, 小城, 琢朗, 中道, 将治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2010
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2010.0.164.0

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Summary:【目的】 膝関節は下肢の中間関節であり、高齢者における膝関節機能障害は転倒リスクの一要因である。今回、変形性膝関節症患者での関節位置覚と転倒について検討し、若干の知見を得たので以下に報告する。 【方法】 対象は当院外来通院し保存的治療を行っている片側性変形性膝関節症患者で、過去に転倒歴3回以上(転倒未遂含む)、膝関節以外特に問題のない、独歩行可能な平均年齢73.3歳の女性16例とした。測定項目は年齢、転倒回数、罹患期間、膝関節自動可動域、片脚立位時間(開眼)、10m歩行時間、関節位置覚(15°、30°、45°、60°)を計測した。関節位置覚は、自然下垂位より伸展方向に3回ずつ行った平均値を用い、設定角度と測定角度との絶対誤差平均値(Absolute Error Average、以下AEA)として表わした。転倒回数3回未満群(3回群)とそれ以上群(多回群)の2群に分けt検定にて比較し、また各項目の関係性をピアソンの相関係数を用い、それぞれ有意水準5%にて検討を行った。被験者には、医師立会いのもと、研究内容を十分に説明し、同意をいただいた方のみを対象者とした。 【結果】 ・3回群と多回群の転倒回数による比較(p<0.05)  膝関節可動域屈曲角度に有意差あり  罹患期間に有意差あり  その他有意差 ・相関関係(p<0.05)  年齢と罹患期間(r=0.62)、年齢と片脚立位時間(r=-0.80)<BR> 年齢と10m歩行(r=-0.54)、転倒回数と片脚立位時間(r=-0.73) 転倒回数とAEA15°(r=0.49)に有意な相関あり 【考察】 今回の対象者の転倒調査では、前遊脚期から遊脚終期周辺での前方躓きが最も多く、歩行中の障害物回避時の不十分な膝関節屈曲角度により躓きやすく、転倒回数も増加することが考えられた。AEA測定にあたっては先行研究より測定方法を十分に考慮して行った。AEA15°測定においてCorriganらは2.6°、Stillmanらは3.7°、平野らは3.0°と報告されており、それと比較するとやや高値を示し、有意差はなかったが、多回群の方が全て大きな誤差を示す結果となった。年齢との相関では罹患期間(r=0.62)、片脚立位時間(r=-0.80)、10m歩行(r=-0.54)であり、身体能力の低下、転倒への危険性が示されたが、鈴木らによると10m歩行時間8.6秒以上、また運動器不安定症機能評価基準では開眼片脚立位時間15秒未満の者は転倒リスクが高いと報告されている。今回の対象者は片脚立位時間と転倒回数で負の相関(r=-0.73)を示し、両基準からすると共に転倒ハイリスク群に該当した。昇らは、膝関節周囲筋力低下が膝関節固有感覚に影響すると述べており、今回筋力測定は行わなかったが、ほぼ全例において15°未満の膝関節屈曲拘縮、5°未満の伸展不全もX-P Grade3~4レベルの数名にみられ、跛行も存在した。また重ねて転倒回数との相関関係でAEA15°(r=0.49)であったことも考慮すると、OA変化に伴い膝関節機能低下が起こり、歩行時遊脚終期での十分な伸展ができず、膝関節15°付近での固有感覚異常をきたし、転倒へと繋がるのではと考えられた。
Bibliography:246
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2010.0.164.0