チーム制リハビリテーション体制が在院日数およびFIMに及ぼす影響の検討

【はじめに】  近年,病院や在宅医療の現場では,一人の患者に対し,医療に従事する多種多様な職種が,各々の高い専門性を前提に,目的と情報を共有することで,患者の状況に的確に対応した医療を展開し,全人的に評価およびアプローチしていく「チーム医療」の概念が定着してきている。リハビリテーションにおいても,一面的視点で患者の目的と情報を捉えるのではなく,多角的視点から患者の状況を把握するため,複数人で目的と情報を共有する「リハビリテーションチーム」を発足させ,リハビリテーションを提供している病院も増加している。このような中,当院でもこれまでの,一人の患者に対し理学療法士・作業療法士各1名で担当する「担当...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2011; p. 241
Main Authors 西村, 亮, 宮本, 一樹, 増見, 伸, 山田, 学, 堀口, 喬, 兒玉, 隆之, 岡本, 伸弘, 田中, 重成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2011
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2011.0.241.0

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Summary:【はじめに】  近年,病院や在宅医療の現場では,一人の患者に対し,医療に従事する多種多様な職種が,各々の高い専門性を前提に,目的と情報を共有することで,患者の状況に的確に対応した医療を展開し,全人的に評価およびアプローチしていく「チーム医療」の概念が定着してきている。リハビリテーションにおいても,一面的視点で患者の目的と情報を捉えるのではなく,多角的視点から患者の状況を把握するため,複数人で目的と情報を共有する「リハビリテーションチーム」を発足させ,リハビリテーションを提供している病院も増加している。このような中,当院でもこれまでの,一人の患者に対し理学療法士・作業療法士各1名で担当する「担当制」から,一人の患者に対し,理学療法士,作業療法士各6名で担当する「チーム制」を導入した。そこで,チーム制のリハビリテーション体制導入が及ぼす影響を検討するために,6ヶ月が経過した時点での「在院日数」,「機能的自立度評価表(Functional Independence Measure; FIM)」について,これまでの「担当制」の結果と比較検討した。 【対象】  「担当制」であった平成21年10月1日から平成21年12月31日の期間と,「チーム制」導入後の平成22年10月1日から平成22年12月31日の期間に当院に入院した患者223名を対象とした。内訳は「担当制」の患者数が116名(男性53名,女性63名),「チーム制」の患者数が107名(男性47名,女性60名)であった。 【方法】  対象を「担当制」群と「チーム制」群の2群に分け,(担当制×チーム制)および(入院時FIM総得点×退院時FIM総得点)の二要因について,二元配置分散分析により検定を行い,多重比較検定にはTukey-Kramer法を用いた。また2群それぞれの在院日数,各患者一日当たりの平均単位についてStudent-T検定を用いて比較検討した。なお,統計処理にはSPSS 11.5J for Windowsを使用した。 【結果】  (1).「担当制」群と「チーム制」群の2群間において,入院時FIM総得点,退院時FIM総得点では有意差を認めなかった。  (2). 在院日数では,「チーム制」が有意に短期間であった(p<0.01)。また,各患者一日当たりの平均単位でも「チーム制」が有意に高かった(p<0.05)。 【考察】  研究結果から,一日当たりの平均単位数の増加および在院日数の短縮が認められた。さらに,その期間内に担当制と同様のFIM得点まで改善が可能であった。これは,リハビリテーションチーム体制の導入により,複数のセラピストによって治療方針や目標などが共有され,より客観的かつ多くの患者情報を把握することができ,質的に安定したリハビリテーションを提供することができたためと考えられた。このことが「在院日数の短縮」および「平均単位数の増加」という具体的結果として示唆されたのではないかと考えた。
Bibliography:241
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2011.0.241.0