釧路湿原における土壌栄養塩の植生タイプによる違い

釧路湿原では現在,農地開発やエゾシカの踏圧等による攪乱が原因と考えられる裸地の形成や植物種構成の変化がみられている.植生の変化が土壌の栄養塩動態を変化させることは,森林生態系において知られているものの,湿原生態系での研究事例は少ない.本研究では,多様な植生タイプを持つ釧路湿原の栄養塩動態に関する基礎情報を把握するため,異なる植生タイプにおける土壌の栄養塩現存量および窒素無機化速度を明らかにした.その結果,土壌溶液中のNH4+ は,他の湿原生態系に比べて低濃度となっていた.表層0 ~ 5 cm における土壌アンモニア態窒素現存量は,フェンにおいて高くなる傾向にあった.また,正味の窒素無機化速度に...

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Published in湿地研究 Vol. 8; pp. 45 - 52
Main Authors 金子, 命, 手塚, 優人, 保原, 達, 日野, 貴文, 中谷, 暢丈, 稲富, 佳洋, 島村, 崇志, 宇野, 裕之, 吉田, 剛司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本湿地学会 2018
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Summary:釧路湿原では現在,農地開発やエゾシカの踏圧等による攪乱が原因と考えられる裸地の形成や植物種構成の変化がみられている.植生の変化が土壌の栄養塩動態を変化させることは,森林生態系において知られているものの,湿原生態系での研究事例は少ない.本研究では,多様な植生タイプを持つ釧路湿原の栄養塩動態に関する基礎情報を把握するため,異なる植生タイプにおける土壌の栄養塩現存量および窒素無機化速度を明らかにした.その結果,土壌溶液中のNH4+ は,他の湿原生態系に比べて低濃度となっていた.表層0 ~ 5 cm における土壌アンモニア態窒素現存量は,フェンにおいて高くなる傾向にあった.また,正味の窒素無機化速度については,フェンおよびボッグで高くなった.このことから,釧路湿原のフェンでは,周囲の物質を地形的に蓄積し易い環境の影響により,窒素現存量が高くなることが予想された.
ISSN:2185-4238
2434-1762
DOI:10.24785/wetlandresearch.WR008006