高齢者の易転倒性に関与する視覚機能の加齢影響について

【目的】  転倒原因については、つまづいた、滑った、ふらついたが大半を占めており、その他に階段を踏み外した、障害物との衝突などが挙げられる。これまでに、筋力・バランス能力などと転倒の関連についての報告は多々あるが、視覚機能と転倒に関する研究は散見される程度である。しかし、視覚機能は聴力、筋力、バランス能力、歩行能力と同様に加齢に伴い低下すると報告されており、転倒に関連する一要因と考えられる。そこで身体活動の起点となる視覚機能に着目し、日常生活で外部環境の立体的把握を集約する静止視力、有効視野の視覚機能と転倒との関連を前期高齢者と後期高齢者に分類し検討することである。 【対象及び方法】  自立歩...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2007; p. 160
Main Authors 平良, 雄司, 金ヶ江, 光生, 釜崎, 敏彦, 松村, 人志, 斧田, 俊彦, 水上, 諭, 坂本, 健次, 石垣, 尚男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2007
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2007.0.160.0

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Summary:【目的】  転倒原因については、つまづいた、滑った、ふらついたが大半を占めており、その他に階段を踏み外した、障害物との衝突などが挙げられる。これまでに、筋力・バランス能力などと転倒の関連についての報告は多々あるが、視覚機能と転倒に関する研究は散見される程度である。しかし、視覚機能は聴力、筋力、バランス能力、歩行能力と同様に加齢に伴い低下すると報告されており、転倒に関連する一要因と考えられる。そこで身体活動の起点となる視覚機能に着目し、日常生活で外部環境の立体的把握を集約する静止視力、有効視野の視覚機能と転倒との関連を前期高齢者と後期高齢者に分類し検討することである。 【対象及び方法】  自立歩行可能な精神・知的障害を有しない外来通院患者で、研究調査の承諾が得られた男女76名(男性27名、女性49名、平均年齢76.8±6.5歳)を対象とした。調査項目は、質問紙にて性別、年齢、過去1年間における転倒経験の有無、既往歴、現病歴を質問した。視覚機能としては、静止視力、有効視野を測定した。静止視力はランドルト環を分単位で表した視角の逆数から算出したものを用いた。また有効視野は、Ishigakiらが考案した視覚機能測定ソフトを使用し、有効視野は認識率で算出した。過去1年間の転倒経験有無の結果より得られた転倒群27名を前期高齢者群(65歳以上75歳未満)と後期高齢者群(75歳以上)の2群に分類し比較検討した。また2群間比較についてはMann-WhitneyのU検定を用いた。統計解析には、SPSS ver11.5を用い、5%未満を有意水準とした。 【結果】 1)静止視力(日常状態での利き目の静止視力)を前期高齢者群と後期高齢者群の2群で比較した結果、両群間に有意差は認められなかった。 2)有効視野を前期高齢者群と後期高齢者群の2群で比較した結果、転倒経験者において後期高齢者群は、有意に有効視野が狭かった(p<0.05)。 【考察】  本研究結果から、静止視力においては、前期高齢者群と後期高齢者群間で有意な差は認められなかった。視覚機能は、身体機能と同様に加齢に伴って低下するが、視力については眼鏡による矯正が可能であり、一般的に日常生活では必要に応じ視力を矯正していることから、前期と後期の高齢者群では差が認められなかったと考えられる。一方、有効視野については、後期高齢者群が有意に狭かった。石垣らによると、有効視野は20歳前後をピークに次第に狭くなり、高齢者では大学生時期(20歳前後)の10%程度であり、周辺での認識が極端に狭小化していると報告している。また視野については、視力と異なり矯正が不可能である。従って、65歳以上の高齢者では、前期高齢者より後期高齢者の有効視野が狭く、転倒の高リスクになると考えられる。
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ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2007.0.160.0