体幹筋力増強訓練が大腿骨近位部骨折患者の歩行における体幹動揺に与える影響について

【緒言】  歩行では立脚初期から荷重応答期にかけて体幹支持筋の収縮がピークとなる。このことから体幹筋の筋力増強を図ることで歩行時の体幹動揺が軽減することが期待される。そこで本研究の目的として、大腿骨近位部骨折患者に対する体幹筋の筋力増強によって歩行時の体幹動揺に軽減がみられるかを検討したので報告する。 【対象】  対象は大腿骨近位部骨折術後の患者11名でT字杖歩行可能な者。中枢疾患や片側の大腿骨近位部骨折以外の整形外科的疾患の既往がなく、本研究の参加に同意が得られた者とした。 【方法】  体幹の筋力増強訓練を実施する群と実施しない群に無作為に割付けを行ない、両群ともに通常のリハビリテーションプ...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2010; p. 246
Main Authors 鮫島, 淳一, 崎川, 和彦, 宮永, なる美, 富岡, 一俊, 松元, 秀次, 小野田, 哲也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2010
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2010.0.246.0

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Summary:【緒言】  歩行では立脚初期から荷重応答期にかけて体幹支持筋の収縮がピークとなる。このことから体幹筋の筋力増強を図ることで歩行時の体幹動揺が軽減することが期待される。そこで本研究の目的として、大腿骨近位部骨折患者に対する体幹筋の筋力増強によって歩行時の体幹動揺に軽減がみられるかを検討したので報告する。 【対象】  対象は大腿骨近位部骨折術後の患者11名でT字杖歩行可能な者。中枢疾患や片側の大腿骨近位部骨折以外の整形外科的疾患の既往がなく、本研究の参加に同意が得られた者とした。 【方法】  体幹の筋力増強訓練を実施する群と実施しない群に無作為に割付けを行ない、両群ともに通常のリハビリテーションプログラムは実施した。本研究は当院の倫理委員会より承認を受けたうえで実施した。体幹筋の筋力増強訓練の方法は、骨盤前方挙上位からの抵抗・圧縮を加える方法を用い4週間実施した。評価方法は研究導入前後の歩行をビデオにて撮影し、画像解析ソフトDARTFISH (DARTFISH社製)を用いて解析を行った。 その他の評価項目として、体幹筋力、タイムアップアンドゴーテスト(以下、TUG)、ファンクショナルリーチテスト(以下、FRT)を測定した。体幹動揺の測定方法は被検者の両肩峰と上前腸骨極にマーカーを貼り、荷重応答期における両肩峰のラインと両上前腸骨極のラインのなす角度を測定した(加藤ら、2007)。体幹筋力の測定にはOG技研社製のISOFORCE GT‐300を用い、体幹筋の筋力増強訓練と同じ姿勢にて行った。 【結果】  対象者11名のうち、最終的に実施しえたのは8名(筋力増強群:4名、群:4名)であった。体幹動揺について健側立脚期では筋力増強群の方が動揺角度が大きくなったが、患側立脚期では両群間で大きな差は認められなかった。体幹筋力は健側、患側ともに筋力増強群の方が大きくなる傾向にあった。その他のTUG、FRTにおいても筋力増強群の方が優位になる傾向にあった。 【考察】 正常歩行では荷重応答期から立脚中期にかけて胸部と骨盤を正中位に保持することが要求される。特に体幹は運動の主体であり、胸部‐骨盤の安定化が必要である。奥村ら(2006)は股関節の運動自由度低下によって生じている体幹や骨盤の機能改善を行うことで運動連鎖機能を効率よく行うことができ、術後早期より安定した歩行(歩容)改善に結びつくとしている。これらの報告や我々の本研究より、体幹筋の筋力増強に加えて姿勢・動作戦略や運動の協調性に関しても学習させることで、体幹動揺をより制御できるものと期待される。 【まとめ】  本研究では体幹筋の筋力増強訓練は体幹筋力とTUG、FRTに好影響を与えたが、体幹動揺に関しては影響が不明確であった。症例数が少ないため、今後も調査を継続していく必要がある。
Bibliography:32
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2010.0.246.0