市販の炭酸泉入浴剤の身体への影響について

【目的】  温熱療法施行時に入浴剤は、頻繁に使用されているが、その入浴剤の身体に及ぼす影響については、未知で使用されるケースが大半である。そこで、今回部分浴に、単純泉の部分浴と単純泉に市販の炭酸泉入浴剤を使用した部分浴を施行し、身体への影響を比較検討し新知見を得たので報告する。 【対象】  対象は、健常若年男性7名(平均年齢20.9±3.2歳)である。 【方法】  部分浴の方法は、室温を19℃に設定した部屋にて、充分な安静座位後に41℃の単純泉に右前腕部の部分浴(単純泉浴)を20分間行い、日を変えて市販の炭酸泉入浴剤を入浴剤の使用方法に沿って使用した41℃の右前腕の部分浴(炭酸泉浴)を20分間...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 160
Main Authors 大重, 匡, 高森, 明久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2008
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Summary:【目的】  温熱療法施行時に入浴剤は、頻繁に使用されているが、その入浴剤の身体に及ぼす影響については、未知で使用されるケースが大半である。そこで、今回部分浴に、単純泉の部分浴と単純泉に市販の炭酸泉入浴剤を使用した部分浴を施行し、身体への影響を比較検討し新知見を得たので報告する。 【対象】  対象は、健常若年男性7名(平均年齢20.9±3.2歳)である。 【方法】  部分浴の方法は、室温を19℃に設定した部屋にて、充分な安静座位後に41℃の単純泉に右前腕部の部分浴(単純泉浴)を20分間行い、日を変えて市販の炭酸泉入浴剤を入浴剤の使用方法に沿って使用した41℃の右前腕の部分浴(炭酸泉浴)を20分間行った。なお、単純泉浴と炭酸泉浴はランダムに施行した。測定項目は、脈拍数、血圧、右上腕の皮膚血流量、舌下温(深部温)、表在温(額、頚部、左上腕、腹部、左大腿、左足背、左足趾)、Borgの主観的作業強度を温感に改変して主観的温感強度として測定した。測定は入浴前と入浴20経過時に行った。統計処理は、主観的温感強度以外は、対応のあるt検定で行ない、主観的温感強度は、ノンパラメトリック検定(対応のあるWilocxon T検定)で行った。 【結果】  脈拍は、安静と比較すると単純泉浴で8.8±6.0回/分、炭酸泉浴で9.3±6.0回/分増加した。安静時からの血圧の変化では、収縮期血圧は単純泉浴で3.3±8.2mmHg、炭酸泉浴で0.1±6.5mmHg低下し、拡張期血圧は、単純泉浴で1.0±6.9mmHg上昇したが、炭酸泉浴では1.6±5.4mmHg低下した。血圧における単純泉浴と炭酸泉浴脈拍比較では、有意差は認めなかった。皮膚血流量は単純泉浴、炭酸泉浴で大きな変化は認めなかった。深部体温は、単純泉浴で0.29℃、炭酸泉浴で0.40℃と上昇し、有意に炭酸泉浴が上昇した(p<.05)。表在温では、各部位の変化は入浴方法の違いで有意な差を認めなかった。主観的温感強度は、単純泉浴より炭酸泉浴が有意に高かった(p<.05)。 【考察】  身体に対する負担では、単純泉浴と炭酸泉浴の前腕浴では、心拍数は温熱作用により脈拍数が約10回/分程度増加したが、血圧はさほど変化しなかったことから今回の部分浴の身体に対する負担は軽かったと考える。それに対し、炭酸泉浴の深部体温への効果は単純泉浴より有意(p<.05)に高く0.4℃上昇した。さらに、温感も単純泉浴より炭酸泉浴が有意(p<.05)に高かったことから、市販の炭酸泉入浴剤の使用は、単純泉より客観的にも主観的にも温熱効果を上昇させることが確認された。以上のことから、前腕浴という身体の1部しか、加温しなくても市販の入浴剤が効率的に身体に温熱効果をもたらし、温感も高められたことから、入浴剤には加温効果があると考える。 【まとめ】  健常若年男性に対して、単純泉の前腕浴と単純泉に市販の炭酸泉入浴剤を使用した前腕浴を施行し、その比較を行った。その結果、市販の炭酸泉入浴剤を使用したほうが、単純泉より有意に深部体温が上昇し、有意に温感が高くなった。
Bibliography:160
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2008.0.160.0