視覚行動論の基礎 : 上丘を中心として

網膜→外側膝状体→視皮質の視覚系に研究を集中していた神経生理学者たちは,最近,系統発生的には原始的な視覚系としての網膜→上丘(視蓋) 視皮質構造と機能に大きな関心を抱きはじめている.ここでは上丘研究の略史をWang(1934)よりはじめ,Apter, Robinson, Stevensにいたる編年史的経過を追って概観した.特に視覚行動論の立場でこの原初視覚系の系統発生的意味を考察した.上丘における視覚マップと眼球運動マップの関係が,初期の研究にみられたように単純でなく,眼球運動に頭部や身体運動の条件も考慮されねばならないようになってきた.少くとも上丘が視覚情報処理の一種のセンターとしての役割を...

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Published in基礎心理学研究 Vol. 1; no. 1; pp. 32 - 44
Main Author 苧阪, 良二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本基礎心理学会 1982
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Summary:網膜→外側膝状体→視皮質の視覚系に研究を集中していた神経生理学者たちは,最近,系統発生的には原始的な視覚系としての網膜→上丘(視蓋) 視皮質構造と機能に大きな関心を抱きはじめている.ここでは上丘研究の略史をWang(1934)よりはじめ,Apter, Robinson, Stevensにいたる編年史的経過を追って概観した.特に視覚行動論の立場でこの原初視覚系の系統発生的意味を考察した.上丘における視覚マップと眼球運動マップの関係が,初期の研究にみられたように単純でなく,眼球運動に頭部や身体運動の条件も考慮されねばならないようになってきた.少くとも上丘が視覚情報処理の一種のセンターとしての役割を演じている限り,これを無視した視覚心理学者たちはその視覚理論の再構築をはからねばならないだろう.
ISSN:0287-7651
2188-7977
DOI:10.14947/psychono.KJ00004405399