当通所リハビリテーション施設における体力測定の横断調査
【はじめに】 当通所リビリテーション施設(通所リハ)では、利用者の心身機能にあわせたリハビリテーションプログラムを作成するために、半年毎に体力測定を実施している。先行研究では、加齢に伴う身体活動能力の低下は他の動作に先行して歩行動作に現れるとされ、歩行速度が体力指標として重要であることが報告されている。本研究は、要介護高齢者の体力測定の項目について、歩行やTimed Up & Go Test(TUG)との関連性から検討した。 【対象と方法】 対象は、当通所リハを利用している要介護高齢者のうち、歩行可能な49名(男性7名、女性42名、平均年齢83.1±6.1歳、要介護度:要支援1~要...
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Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2009; p. 208 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州理学療法士・作業療法士合同学会
2009
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu |
Subjects | |
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ISSN | 0915-2032 2423-8899 |
DOI | 10.11496/kyushuptot.2009.0.208.0 |
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Summary: | 【はじめに】 当通所リビリテーション施設(通所リハ)では、利用者の心身機能にあわせたリハビリテーションプログラムを作成するために、半年毎に体力測定を実施している。先行研究では、加齢に伴う身体活動能力の低下は他の動作に先行して歩行動作に現れるとされ、歩行速度が体力指標として重要であることが報告されている。本研究は、要介護高齢者の体力測定の項目について、歩行やTimed Up & Go Test(TUG)との関連性から検討した。 【対象と方法】 対象は、当通所リハを利用している要介護高齢者のうち、歩行可能な49名(男性7名、女性42名、平均年齢83.1±6.1歳、要介護度:要支援1~要介護3)である。方法は2008年11月に握力、箸での豆つまみ動作、5m最大歩行時間、TUG、長座位体前屈距離を評価した。握力の測定は、直立姿勢で腕を体側に垂らした状態で最大握力を測定した。豆つまみ動作は10粒の大豆を箸で椀から椀へ移す所要時間を測定した。歩行速度は平地11mを歩行してもらい中間の5mを測定区間として所要時間を計測した。TUGは椅子に座った姿勢から立ち上がり3m先の目印まで最速で歩いて折り返し再び椅子に座るまでの所要時間を測定した。長座位体前屈距離は壁に背と臀部をつけ、肩幅の位置で肘を伸展し測定器に手をついた長座位姿位から前屈し測定器の移動した距離を測定した。統計処理は、各測定値間の関係について、ピアソンの相関係数を用いて検討した。なお、統計学的有意水準は5%とした。 【結果】 相関分析の結果、TUGと歩行時間(r=0.79,p<0.01)、TUGと豆つまみ動作(r=0.43、p<0.05)に有意な正の相関が認められ、TUGと握力(r=-0.47、p<0.01)、歩行時間と握力(r=-0.39、p<0.01)に有意な負の相関が認められた。一方、長座位体前屈距離はすべての測定値と有意な相関が認められなかった。 【考察】 一般に、身体の柔軟性は運動に伴う障害の予防や後療法の評価として重要と考えられている。ただし、今回の結果では、柔軟性の指標とした長座位体前屈距離は、要介護高齢者の歩行やTUGとの関連は認められなかった。これは歩行やTUGの速さの要素には筋力や俊敏性が必要と考えられ、長座位体前屈によって計測される柔軟性では俊敏性や協調性は評価されないためと考えられた。反面、豆つまみ動作とTUGに相関が認められたのは、豆つまみ動作が俊敏性と協調性を必要とする動作であるためと推察した。また握力は、高齢者の体力を反映する指標であることが既に報告されているが、今回の結果も先行研究を追認した。 |
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Bibliography: | 208 |
ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
DOI: | 10.11496/kyushuptot.2009.0.208.0 |