脳卒中片麻痺患者の装具判定に関わる因子について

【目的】  脳血管障害の理学療法において,装具療法は重要な介入方法の一つであり,その効果は様々な文献で報告されている.その中で長下肢装具(以下,LLB)と短下肢装具 (以下,SLB)は臨床の場面でよく使用する.LLB又はSLBのどちらを処方するかは膝の支持性や他の評価と照らし合わせ総合的に判断するというものが多く,その判断基準は明確にされていない.本研究の目的は装具作成患者の評価項目を比較検討することで,装具作成時やLLBからSLBへ変更する際の判断基準の一助とすることである. 【対象】  当院に入院された脳血管障害の患者で,LLBを作成した者26名(男性21名,女性5名,平均年齢69.5±1...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2008; p. 214
Main Authors 笹原, 順哉, 原田, 直樹, 西本, 加奈, 宮本, 奈央, 谷川, 真澄, 西村, 朋美, 大木田, 治夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2008
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2008.0.214.0

Cover

More Information
Summary:【目的】  脳血管障害の理学療法において,装具療法は重要な介入方法の一つであり,その効果は様々な文献で報告されている.その中で長下肢装具(以下,LLB)と短下肢装具 (以下,SLB)は臨床の場面でよく使用する.LLB又はSLBのどちらを処方するかは膝の支持性や他の評価と照らし合わせ総合的に判断するというものが多く,その判断基準は明確にされていない.本研究の目的は装具作成患者の評価項目を比較検討することで,装具作成時やLLBからSLBへ変更する際の判断基準の一助とすることである. 【対象】  当院に入院された脳血管障害の患者で,LLBを作成した者26名(男性21名,女性5名,平均年齢69.5±13.5歳)である. その内LLBからSLBへ変更できた者(以下,変更群)は19名,SLBへ変更できなかった者(以下,未変更群)は7名であった. 【方法】 評価は座位能力,Br.stage,下肢の感覚(深部・表在),立位での下肢の支持性(以下,支持性),背臥位での下肢挙上(以下,下肢挙上)の6項目で行った.座位能力は鷹野らが使用している座位バランス能力評価を用い5段階で評価した.支持性は立位にて膝折れの程度を3段階で評価し,下肢挙上は5段階で評価した. 比較検討は1)変更群における,装具作成時とSLB変更時の各評価項目,2)変更群のSLB変更時と未変更群の退院時の各評価項目にて行った.  統計学的処理は,1)は対応のあるt検定を,2)については対応のないt検定を用いて行った. 【結果】  1)変更群の比較では,座位能力,Br.stage,支持性,下肢挙上 ,深部感覚にて中間評価時の方が有意に改善しているという結果を得た.表在感覚には有意差を認めなかった.  2)変更群と未変更群の比較では座位能力,支持性,下肢挙上 に有意な差を認め変更群の方が未変更群と比較し座位能力や下肢の機能が良いという結果が得られた.それ以外のBr.stageや感覚には有意差を認めなかった. 【考察】  結果1)では殆どの項目で改善したという結果であり,変更群では各項目で総合的に回復していることが確認できた.これに対し結果2)では未変更群はBr.stageや感覚は有意差という結果から同等の回復が認められたものと考えられるが,座位能力や下肢の支持性が獲得できていないことが確認された.SLBに変更する際下肢の支持性が必要であることは当然の結果である.  それに加え,今回の結果では座位能力が関係していることが示された.座位能力の高い患者は体幹の安定性が高いことが伺える.そのような患者ほど立位で姿勢を制御する能力が高いと考えられSLBへ変更しやすいのではないかと考えられた.また今回有意差は見られないものの,変更群で初期時の座位能力が高い患者ほど短期間でSLBへ変更している傾向が見られた.このことから座位能力や下肢の支持性が装具作成時,及び装具を変更する際の有効な判断基準の一つとして用い得ることが示唆された.一方Br.stageや感覚障害はLLBかSLBを判断する際の決定的な因子に必ずしもなっていないことが示唆された.
Bibliography:214
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2008.0.214.0