客観的運動処方が可能であった中等症慢性閉塞性肺疾患の一例

【はじめに】 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の運動処方、制限因子の検討には呼気ガス分析等総合的評価が必要であるが、多くの施設において実施は困難である。今回、特別な機器を使用せず、運動処方が可能であった中等症COPD患者を経験することができたので報告する。 【症例紹介】 症例は、81歳、女性、診断名:COPD、主訴:動作時の呼吸困難であった。現病歴は平成17年頃により歩行時呼吸困難感が出現し近医受診。アレルギー性鼻炎と診断され内服治療を受けるも症状改善みられず平成20年1月、呼吸器症状の精査及び呼吸リハビリテーションの適否判定を目的に当院に入院、前述の診断を受けた。身体所見は呼吸機能検査:FVC ...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 116
Main Authors 白仁田, 秀一, 阿波, 邦彦, 山田, 穂積, 堀江, 淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2008
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Summary:【はじめに】 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の運動処方、制限因子の検討には呼気ガス分析等総合的評価が必要であるが、多くの施設において実施は困難である。今回、特別な機器を使用せず、運動処方が可能であった中等症COPD患者を経験することができたので報告する。 【症例紹介】 症例は、81歳、女性、診断名:COPD、主訴:動作時の呼吸困難であった。現病歴は平成17年頃により歩行時呼吸困難感が出現し近医受診。アレルギー性鼻炎と診断され内服治療を受けるも症状改善みられず平成20年1月、呼吸器症状の精査及び呼吸リハビリテーションの適否判定を目的に当院に入院、前述の診断を受けた。身体所見は呼吸機能検査:FVC 1500ml %FVC 75% FEV1.0 790ml、FEV1.0% 57%、%FEV1.0 50%(GOLD分類中等症)、%IBW:99%、MRC息切れスケールIIIであった。 【理学療法評価】 MIP:44.0cmH2O、MEP:95cmH2O、膝伸展筋力:右:12.7Kgf左:10.0kgf、握力:右:15.5kg 左13.0kg、Time up and go Test: 5.87秒、6分間歩行距離テスト:距離:455m、SpO2:99→98、Pulse:56→80、Borg Scale (呼吸困難感):0→6、Borg Scale (下肢疲労感):0→3、Incremantal Shuttle Walking Test(ISWT):距離:430m、SpO2:96→96、Pluse:72→110、 Borg Scale(呼吸困難感):0→9、Borg Scale(下肢疲労感):0→7、終了時不整脈の出現あり、100%ISWTの歩行速度にてECGチェックの結果、心室性期外収縮(VPC)の散発が認められた。NRADL(合計):98点、St George’s Respiratory Questionaire(合計):34.3点であった。 【運動処方】 ISWTでの距離(440m)から予測Peak VO2(=0.025×距離+4.19)15ml/min/kgを算出。全身持久力改善を目的とし負荷設定70%Peak VO2(10.5ml/min/kg)で運動処方した。理学療法プログラムへの応用として、70%Peak VO2をMETsに換算、3METsとし、Ainsworthらによる「身体活動のMETs表」より歩行速度67m/分を負荷量として指導した。その他頻度は5回/週、時間は30分、種類は平地歩行とした。また本運動処方にてVPC、SpO2<90を確認した。 【考察】 軽症~中等症COPD患者であれば、ISWTなどにより簡便な方法で客観的な運動処方が可能である。早期からの理学療法の導入が重要であると考えられた。また運動処方するに当たり循環能等のリスク評価も合わせて行うことの重要性を再認識した。
Bibliography:116
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2008.0.116.0