運動力学を応用したClinical Reasoning Process

【はじめに】 Clinical Reasoning(以下CR)で、病態生理学的側面からのマネージメントは、従来より実施されてきたことである。また運動力学分野の基礎研究の進歩により、変性疾患やスポーツ障害では、病態への寄与因子として姿勢・動作を捉えなおし、その知識をCRに導入することの有用性が高まってきている。今回、動作分析からストレス要因の究明を、運動力学的解釈を踏まえ検討したので報告する。 【症例紹介】 55歳の男性、平成13年3月左人工股関節置換術(以下THA)施行し、同年6月に右THA施行。右側術後3日目で脱臼、徒手整復し経過観察。平成16年5月に右股関節痛増大し、同年11月に再置換術施...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2005; p. 101
Main Author 安田, 和弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2005
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2005.0.101.0

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Summary:【はじめに】 Clinical Reasoning(以下CR)で、病態生理学的側面からのマネージメントは、従来より実施されてきたことである。また運動力学分野の基礎研究の進歩により、変性疾患やスポーツ障害では、病態への寄与因子として姿勢・動作を捉えなおし、その知識をCRに導入することの有用性が高まってきている。今回、動作分析からストレス要因の究明を、運動力学的解釈を踏まえ検討したので報告する。 【症例紹介】 55歳の男性、平成13年3月左人工股関節置換術(以下THA)施行し、同年6月に右THA施行。右側術後3日目で脱臼、徒手整復し経過観察。平成16年5月に右股関節痛増大し、同年11月に再置換術施行、翌月に転倒し右大腿骨骨幹部骨折となり骨接合術を施行。その後当院にリハビリ目的で入院。平成17年3月にT字杖歩行自立に至り、退院され外来通院となる。退院後3週目頃より、右足底部の強い疼痛を訴え始め、足底筋膜炎の診断を受ける。 【動作分析および臨床推論過程】 右単脚支持期に主に着目した。Loading ResponseからMid Stance(以下MSt)にかけて、足部は過外転し、MStに移行するにつれ体幹は、右側偏移する。Terminal Stance(以下TSt)まで体幹は偏移したまま、Pre Swingより急激に左側に体幹を偏移しInicial Contactへと移行する。 股関節外転モーメント減少と体幹深部腹筋群機能不全により、体幹側屈により重力作用線を股関節付近に通し、股関節外転モーメントの減少に対応した支持期をとる。また身体重心を対側へ移行させるための股関節外転モーメントが十分に発揮できず、膝関節外反および足関節の外反モーメントで補償する。つまり骨盤帯による重心制御能を、足部が補償することにより力学的負荷を増大させ、加えて矢状面ではMStからTStで足関節底屈方向に負のパワーが働く。これにより足底筋膜は、過外転による伸張と力学的負荷による過剰収縮という相反する力を受ける。 【治療戦略】 1)股関節外転モーメントの獲得 2)体幹深部腹筋群の強化および動作場面への反映 3)大腰筋・脊柱起立筋の共同作用による下部体幹の安定化 4)体幹正中位感覚の強化 【結果及び考察】 右単脚支持期の体幹偏移は軽減し、運動療法施行後3週間で疼痛は軽快した。通常体幹の関節モーメントは、両股関節モーメントの総和で表されほぼゼロに等しい。しかし股関節モーメントの減少が生ずると、重力対応の結果、体幹側屈を余儀なくされ、加えて体幹深部腹筋群機能不全より、身体正中化は困難になる。下肢先端から出力された筋活動の総和として床反力を発生する中で、一部の機能破綻が他部位への負荷を増大していた。本例では重力対応が是正されたことにより力学的負荷が軽減したと思われる。今回力学的因子について言及したが、諸因子を考慮しCRを構築していく必要がある。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2005.0.101.0