ナノ針状材料で生きた細胞の情報を探る 原子間力顕微鏡による生体試料の力学的性質の解析

生体試料の溶液中での観察が可能である原子間力顕微鏡は,生体分子のイメージングだけでなく,分子間相互作用や弾性といった力学的な性質を解析する装置としても利用されている.さらにわれわれは,ダメージを与えずに生きた細胞を解析できる,非常に細い針(ナノニードル)を細胞に挿入することで細胞内部のタンパク質を検出する手法を開発した.細胞に針を刺すことは乱暴な行為に思われるかもしれないが,直径200 nmのナノニードルでは,1時間以上挿入を維持しても細胞を殺すことはなく,100回に及ぶ繰り返し挿入を行っても細胞の分裂速度に影響がない.本稿では原子間力顕微鏡を用いた細胞弾性の測定および1分子の相互作用解析に加...

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Published in化学と生物 Vol. 55; no. 3; pp. 196 - 202
Main Authors 山岸, 彩奈, 中村, 史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本農芸化学会 20.02.2017
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Summary:生体試料の溶液中での観察が可能である原子間力顕微鏡は,生体分子のイメージングだけでなく,分子間相互作用や弾性といった力学的な性質を解析する装置としても利用されている.さらにわれわれは,ダメージを与えずに生きた細胞を解析できる,非常に細い針(ナノニードル)を細胞に挿入することで細胞内部のタンパク質を検出する手法を開発した.細胞に針を刺すことは乱暴な行為に思われるかもしれないが,直径200 nmのナノニードルでは,1時間以上挿入を維持しても細胞を殺すことはなく,100回に及ぶ繰り返し挿入を行っても細胞の分裂速度に影響がない.本稿では原子間力顕微鏡を用いた細胞弾性の測定および1分子の相互作用解析に加えて,抗体修飾ナノニードルを用いた細胞内タンパク質の力学検出に関して紹介する.
ISSN:0453-073X
1883-6852
DOI:10.1271/kagakutoseibutsu.55.196