経済実験による危険回避度の特徴の解明

本論文の目的は,危険回避度に関する様々な特徴を,くじの売買を内容とする経済実験によって明らかにすることである.本実験の特徴の一つは,被験者に学生でなく,高齢者グループと有業者グループを用いたことである.主な結論は,次のようにまとめられる.第1に,異なる当選確率のくじに直面した被験者は,当選確率が高いくじの場合により危険回避的な行動をとる.第2に,被験者の資産や所得といった個人属性と危険回避度との間には安定的な関係はみられない.第3に,獲得賞金額(資産)は,有意に危険回避度を低下させる.すなわち,資産額が2倍になった場合に,絶対的危険回避度はほぼ半分の大きさに低下する.第4に,実験直後におこなっ...

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Published in行動経済学 Vol. 5; pp. 26 - 44
Main Authors 筒井, 義郎, 大竹, 文雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 行動経済学会 2012
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ISSN2185-3568
DOI10.11167/jbef.5.26

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Summary:本論文の目的は,危険回避度に関する様々な特徴を,くじの売買を内容とする経済実験によって明らかにすることである.本実験の特徴の一つは,被験者に学生でなく,高齢者グループと有業者グループを用いたことである.主な結論は,次のようにまとめられる.第1に,異なる当選確率のくじに直面した被験者は,当選確率が高いくじの場合により危険回避的な行動をとる.第2に,被験者の資産や所得といった個人属性と危険回避度との間には安定的な関係はみられない.第3に,獲得賞金額(資産)は,有意に危険回避度を低下させる.すなわち,資産額が2倍になった場合に,絶対的危険回避度はほぼ半分の大きさに低下する.第4に,実験直後におこなったアンケートにおけるさまざまな危険回避度の指標と実験で得られた危険回避度の値とには相関関係がみられる.第5に,危険回避度が高い人ほど時間割引率が低いという傾向が安定的に見られる.
ISSN:2185-3568
DOI:10.11167/jbef.5.26