脳損傷者に対するPaced Visual Serial Addition Task(PVSAT)導入の試み

【はじめに】  Paced Auditory Serial Addition Task(以下PASAT)は、脳損傷例における情報処理速度低下などの評価に用い、課題成績は高次の注意機能を反映すると言われている。しかし、難易度が高く対象者のストレスを伴うことがある。FosらはPASATの変法として、パソコン画面で視覚的に数字を提示することで難易度を減じたPVSATを報告している。 今回、PASATがTrail Making Test(以下TMT)-Bの注意機能と類似していることに着目し、上肢麻痺や半側空間無視(以下USN)などによりTMTが施行困難な場合の代用としてPVSATを用いることができるか...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2010; p. 266
Main Authors 児玉, 陽子, 斎藤, 弘道, 志波, 直人, 岩佐, 親宏, 重森, 稔, 宮本, 一樹, 長, 綾子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2010
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2010.0.266.0

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Summary:【はじめに】  Paced Auditory Serial Addition Task(以下PASAT)は、脳損傷例における情報処理速度低下などの評価に用い、課題成績は高次の注意機能を反映すると言われている。しかし、難易度が高く対象者のストレスを伴うことがある。FosらはPASATの変法として、パソコン画面で視覚的に数字を提示することで難易度を減じたPVSATを報告している。 今回、PASATがTrail Making Test(以下TMT)-Bの注意機能と類似していることに着目し、上肢麻痺や半側空間無視(以下USN)などによりTMTが施行困難な場合の代用としてPVSATを用いることができるか、症例を通して検討を行ったので報告する。 【症例紹介】 (症例1)53歳女性、クモ膜下出血。自宅にて歩行中のふらつきで発症。頭部CT上は左シルビウス裂に強いクモ膜下出血を認め、ネッククリッピング施行。ADLは自立していた。 (症例2)51歳男性、右被殻出血。帰宅途中、全身に脱力感を認め発症となる。左上下肢麻痺及び感覚障害があり、運動維持困難やUSNがみられた。ADLは食事・整容が自立で他は要介助であった。 【検査方法】 PVSATはPower Pointにて作成した画面にPASATと同様に1秒間隔、2秒間隔で数字を提示するように設定した。他の神経心理学的検査としてHDS-R、MMSE、Wisconsin Card Sorting Test(以下WCST)、TMT-A・B、PASAT-1秒用・2秒用を本人の同意を得た後、検査についての説明を十分に行った上で施行した。 【結果】 症例1はHDS-R・MMSEともに30点、WCST達成カテゴリー4、TMT-Aは97秒でBは123秒、PASAT-1秒用は正解数17個で2秒用は15個。PVSAT-1秒用は正解数32個で2秒用は56個であった。 症例2はHDS-R26点、MMSE27点、WCSTは達成カテゴリー5、TMTはUSNの影響で施行困難、PASAT-1秒用は11個で2秒用は16個。PVSAT-1秒用は17個で2秒用は28個であった。 【考察とまとめ】 今回、PVSATと他の神経心理学的検査を2名の脳損傷者に対し施行した。2症例とも検査上、知的水準や前頭葉機能面の著しい問題はみられず、検査の意図を十分理解できる状態であると考えられた。PVSATの結果としては、2症例ともPASATよりも正当率が増しており、Fosらの報告通り難易度が低い課題であると考えられる。また、症例2においてはUSNの影響でTMTが施行困難であったがPVSATは可能であったため、TMTが使用できない場合にPVSATを代用とすることが可能ではないかと考えられる。今後、症例数を重ね検討をしていく必要があると考える。
Bibliography:338
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2010.0.266.0